マニアックな資格:玉掛け作業に関わる技能講習とは?その内容と安全対策について解説

2021年8月24日安全教育,特別教育・技能講習,資格講習特別教育・技能講習

この記事では、マニアックな資格「玉掛け作業」の技能講習について解説していきたいと思います。

また、一見簡単そうに見える玉掛け作業で労災事故が多い原因を踏まえながら、どのように安全対策を行っていくかも合わせて解説していきたいと思います。

玉掛け作業ってどんなときに使うのかな?

と、そもそも玉掛け作業ってどんなときに使うのかよく分からないかたもいるのではないかと思います。

実は、玉掛け作業は建設業だけでなく、製造業や運送業などでも知っておくべき作業内容になります。

また、この玉掛け作業は一見すると簡単そうに見える作業ですが、意外と労災事故の多い作業なのです。

そのため、玉替え作業に関わる技能講習は受講しておかなければならないと定められています。

そこで、今回は玉掛技能講習で資格取得する方法と特別教育で更にスキルを伸ばす知識を解説していきます。

このブログは他にもこのようなことがまとめてあります。合わせて気になる記事を確認してみてください。全体を確認するにはこちら

玉掛け作業とは?

玉掛けは、荷物にワイヤーや帯を巻いてクレーンのフックに引っかける作業です。

なんだか簡単に感じる作業ですよね。

ですが、正しい玉掛け作業を行わなければ、労災事故を招く危険な作業です。

この、事故が起きやすい原因や資格を取得する内容については後ほど解説していきます。

クレーン合図の仕方

玉掛合図方法

クレーン作業を行う場合は、人払いして立ち入り禁止にするなどクレーン周りの安全対策を施します。

クレーン作業を行う場合、オペレーターと呼ばれる運転者と下で誘導する誘導員の二人三脚で作業に当たります。

クレーン運転席からでは、死角が多く、また積荷との距離が分かりづらいことからこのような配置で作業を行います。

クレーンに玉掛け者はオペレーターに荷物を動かして欲しい場所や降ろしてもらいたい場所に、手で合図します。

この合図の仕方は、玉掛け作業をする人であれば必ず知っておくべき内容なので、合わせて覚えておくようにしましょう。

合図は無線でやり取りすることも

他にも、クレーンのオペさんと連携するのに無線や声で合図することあります。

クレーンでの合図は鳶さんとかカッコよくやります。

例えばメジャーな職人あるあるですが・・・

  • ゴーヘイ」:荷物吊り上げの際にオペに巻き上げ
  • スラー」:荷物を下げるときにオペさんに巻き下げ

とかが普通ですが、鳶さんとかになるともっといい感じなります。

  • 「チョイ上げ、チョイ下げ」
  • 「親スラ子ゴーヘイ」
  • 「チョイ親ゴー子ゴー」
  • 「高速ゴーヘイ」

とか暗号ではありませんがこのような指示が飛びます。

これが下手ならオペさんから無線から怒号飛びます。

吊り荷に使うための吊り具はどんなもの?

安全作業には、吊り具の点検は必須です。
台付と玉掛けワイヤーは素材が違うので注意しましょう。

吊り具には、荷物に合わせたワイヤーロープスリングベルトを使います。

鉄骨を吊り上げる場合、ワイヤーロープを使用すると鉄の角で切れてしまったり、クセ(キンク)になってしまうことがあるため、吊り上げるものによって吊り具も臨機応変に変える必要があります。

下手な玉掛けは荷物の落下をさせる原因になります

例えば、ピアノを吊り出すなら毛布とスリンベルトで吊り出したりするようにします。

ワイヤーロープでは、ピアノを破損してしまう可能性があるので吊り具では避けるようにしているのです。

スリングベルト

ワイヤーのなかでも種類があり、ワイヤーの太さを「〇分(〇ぶ)」という単位で表して種類を分けています。

3分ワイヤー4分ワイヤーは一般的な建設資材吊り込みに使います。

何t材料の重さがあるかによっては、使い分ける目方(重さを目で見て判断)して使い分けます。

鉄筋の目方から重量割り出し吊り上げ荷重検討

この「使い分ける見方」は、吊るものによって割り出しますが、ここでは建設業でよく使われる「鉄骨」を用いて「つり上げ荷重」をどのように算出するか、下の表を用いて解説していきます。

例えば鉄筋の表を参考にすると、

D13の異形鉄筋は単位質量が、0.995kg/mです。

長さが5.5mのところを見てみると、長さの質量は4.98kg/mと書かれています。

つまり、100本の束の場合、498kg=約500キロになります。

500キロという質量が分かったので、この重さを踏まえてワイヤーロープを選定していきます。

このように、質量を算出し、吊り荷の形状の合わせて吊り具を選定していくのです。

材料ごとにワイヤーロープを算出できるツール

本当に目方だけでは失敗するので、綿密に質量を割り出す必要があります。

ですが、いちいち表をみて計算していくのはとても効率が悪くなると感じるのではないかと思います。

そこで、コンドーテックさんのホームページにあるような計算ツールを用いると効率よく作業ができるのでおすすめです。

是非、玉掛け作業で吊り具を選定する場合に活用してみてください。

他にも、鉄骨だけでなく建設業で使われる鋼板の比重から算出する方法を下の記事で解説しているので合わせて読んでみてください。

吊り具の掛け方

吊るときに重さを精密に算出するのは分かったけど、吊り具はどうやって掛けるのかな?

講習は、あくまでワイヤーの知識や吊り方の知識がメインで編み方は教えてくれませんので、現場で吊り具の角度を経験していく必要があります。

ちなみに、筆者はワイヤーの編み方は鳶に教えてもらいました。

一般的に吊り具の角度は60°程度に収めるというのが推奨されています。

吊り具の本数は、吊り荷の形状によって違うので状況に合わせて対応していくようにしましょう。

ワイヤーロープの張力(吊り荷を引っ張ることができる力)から算出して選定する方法については以下の記事にまとめていますので、合わせて参考にしてみてください。

玉掛け作業での労働災害事例

玉掛け作業は、度々労働災害が起こることもある危険な作業です。

吊り荷は大なり小なり様々なものがありますが、特に大きものを吊り上げるときはより正確な玉掛作業を行うよう心掛けなければなりません。

実際に玉掛けが失敗した場合の労働災害を見てみましょう。

港で大型クレーンを吊り上げたときの横転事故

重心の取りづらい大型車両は玉掛けをする際に、どこに吊り具を掛ければよいのか、またその車体重量をより正確に算出しなければなりません。

そのため、目方のみで判断するのではなく、車体形状や重量などを鑑みた上で玉掛けするようにする必要があります。

橋桁架け替え工事の際の落下事故

動画のような形状は、一見すると玉掛けしやすく感じるかもしれません。

しかし、既に組み立てられている製造物は、実際の鋼材に比べて重量が前後しするため、吊り荷重量から張力を算出することがより難しくなります。

ただ、このような製造物は図面に重量が書かれている場合が多いので、設計図から吊り荷を算出すると正確に玉掛け作業が行えます。

二つの動画から分かるように、個人の見方だけで判断するのではなく、図面や車両概要から正確に重量を知ることで事故を未然に防ぐことができるのではと思います。

その現場の状況によって多少変わるかと思いますが、一つの対策として捉えていただければと思います。

無資格での玉掛け作業で書類送検

玉掛け作業は簡単そうに見えるけど、危ない作業だから資格を持っている人が作業に当たらないといけないよー…

徳島労働基準監督署は、無資格者に対して吊り上げ荷重1トン以上の移動式クレーンの玉掛け作業を行わせたとして、阿波バラス㈱(徳島県吉野川市)と同社工場長を労働安全衛生法第61条(就業制限)違反の容疑で徳島地検に書類送検した。令和2年3月、同社労働者が負傷する労働災害が発生している。

労災は、同社工場で発生した。工場長を含む3人で、ワイヤロープで玉掛けした鉄板の束を移動式クレーンでトラックから地面に降ろす作業をしていた際、鉄板の束が傾いてワイヤロープが切れ、労働者に落下している。

【令和2年7月9日送検】

労働新聞社引用

滋賀・大津労働基準監督署は、無資格にもかかわらず玉掛け作業を行った梅立工務店(=うめりゅうこうむてん、滋賀県野洲市)と同社代表取締役を労働安全衛生法第61条(就業制限)違反の容疑で大津地検に書類送検した。平成28年4月、同社労働者が頭部を強打し、脳挫傷などを負う労働災害が発生している。

同代表取締役は、野洲市内の新築工事現場で棟上げを行う際、無資格にもかかわらず玉掛け作業を行った。玉掛けに使用した繊維ベルトが切れ、持ち上げていた梁が落下し、仮設足場に直撃。足場が崩落し、足場で作業していた同社労働者が墜落して負傷した。「資格が必要な作業だと知っていたが、資格を取得していなかった」と供述している。

【平成28年7月25日送検】

労働新聞社引用

2つのケースでは、玉掛けの資格を保有していない(無資格)の作業者が作業に当たったことで書類送検された事例です。

どの資格を取得する際にもいえることですが、資格を取得する際は安全教育も同時に行われます。

そのため、資格を保有している人=その作業についての安全対策を十分に知っている人、ということがいえます。

つまり、資格を保有している人が作業に当たるのは、作業中の安全を保障するためのものでもあるので必ず有資格者が作業に当たるようにしましょう。

玉掛け技能講習取得する方法と講習内容について

では、玉掛け技能講習の内容を解説していきます。

玉掛けを取得すると仕事の幅は広くなるから取得しておくといいです


制限荷重1t以上の揚貨装置及びつり上げ荷重1t以上のクレーン、移動式クレーンもしくはデリックの玉掛け業務に従事する方は、労働安全衛生法に基く技能講習を修了しなければならないことが義務づけられています。

ちなみに、荷重1トン未満の場合は特別教育を受講する必要がありますが、実際の現場ではあまり役に立たないので、技能講習を受講しておくことをおすすめします。

受講時間は、現在保有している資格及び業務経験によって変わります。

玉掛け技能講習を15時間で取得

下記のいずれかの資格取得で講習時間を短縮して取得できます。

  • 移動式クレーン、クレーン・デリック(旧クレーン運転士免許、旧デリック運転士免許含む)、揚貨装置いずれかの運転士免許所有者
  • 小型移動式クレーン
  • 床上操作式クレーンいずれかの運転技能講習修了者

また、15時間では、こちらの取得方法でも短縮して取得可能です。

  • 玉掛け特別教育修了後、つり上げ荷重が1t未満のクレーン等の玉掛け経験が6ヶ月以上ある方。(特別教育修了証、事業主経験証明必要)

玉掛け技能講習を16時間で取得する場合

  • つり上げ荷重が1t以上のクレーン等の玉掛けの補助作業経験が6ヶ月以上ある方。(事業主経験証明必要)

玉掛け技能講習を18時間で取得

  • クレーン等の特別教育修了後、クレーン等の業務経験が6ヶ月以上ある方。(特別教育修了証のコピー貼付、事業主経験証明必要、定期点検表添付)
  • 鉱山にてつり上げ荷重が5t以上のクレーン、移動式クレーンの業務経験が1ヶ月以上ある方。(事業主経験証明必要)

以上の条件のうち、どちらかを満たしている方が対象となります。

尚、クレーンの作業内容については以下の記事を参考にしてください。

玉掛け技能講習を19時間で取得する場合

上記のいずれにも該当しない人が対象になります。

つまり、他の資格がなくても取得することができます。

玉掛け作業技能講習を受講するメリットは他にも

先述したように玉掛け作業の資格を取得すると仕事のはばが広がります。

そのメリットと作業内容を解説しているので、興味のあるものがありましたらリンク先にとぶことができるので合わせて読んでみてください。

建設キャリアアップシステムでの評価が上がる

玉掛け作業を取得すると、ITと建設業を連携させることで作業員のキャリアを見える化するシステム「建設キャリアアップシステム」での評価を上げる要素となることができます。

建設キャリアアップシステムでの評価が上がると、最終的にその職種の登録基幹技能者としての資格を取得することができるようになります。

登録基幹技能者になると、その職種に対するプロフェッショナルとして認められるようになります。

また、現場を管理する立場にもなることができるので自身の処遇改善にもつながるメリットもあります。

職種/作業名参考記事
道路標識/路面標示工建設キャリアアップシステム道路標識/路面標示工と登録基幹技能者
硝子工事建設キャリアアップシステム硝子(ガラス)工事ゴールドカード取得と登録基幹技能者
基礎ぐい工事基礎ぐい工事建設キャリアアップシステムゴールドカード取得と登録基幹技能者
外壁仕上げ建設キャリアアップシステム外壁仕上げの能力評価基準
グラウト工事建設キャリアアップシステムグラウト工事の能力評価基準
保温・保冷工事建設キャリアアップシステムレベル保温・保冷工事能力評価基準
ダクト工事建設キャリアアップシステムでダクト工事職人技能判定と登録基幹技能者
内装仕上げ建設キャリアアップシステム内装仕上げの技能者能力評価
とび職建設キャリアアップシステム鳶(とび)技能者ゴールドカード取得と登録基幹技能者
コンクリート技能者建設キャリアアップシステムプレキャストコンクリートの技能者能力評価
プレキャストコンクリート建設キャリアアップシステムプレキャストコンクリートの技能者能力評価
機械土工建設キャリアアップシステム機械土工ゴールドカード取得と登録基幹技能者
型枠大工建設キャリアアップシステム型枠大工ゴールドカード取得と登録基幹技能者
ALC建設キャリアアップシステムALCゴールドカード取得と登録基幹技能者
鉄筋工建設キャリアアップシステム鉄筋工ゴールドカード取得と登録基幹技能者
塗装職人建設キャリアアップシステムの塗装職人のゴールドカード取得と登録基幹技能者
造園工事建設キャリアアップシステム造園工事のゴールドカード取得と登録基幹技能者
トンネル工事トンネル工事の建設キャリアアップシステムゴールドカード取得と登録基幹技能者
防水施工防水施工CCUS建設キャリアアップシステム評価ゴールカード取得と登録基幹技能者
橋梁建設橋梁建設キャリアアップシステム評価レベルとゴールドカード取得と登録基幹技能者

外国人労働者(特定技能)ビザが取得できる

玉掛け作業の資格を取得すると、外国人労働者を建設現場で雇うための指標「特定技能ビザ」を取得するときに役立ちます。

特定技能とは、近年の建設業における労働者不足問題を打破するために、外国人労働者を受け入れる体制を整える際に活用されるビザです。

この資格を取得している外構人労働者であれば、企業側の労働者不足改善に繋がりますし、また外国人労働者としても安定的職種に就けるメリットがあります。

普段あまり聞きなれない資格かもしれませんが、どんな資格か是非合わせて読んでみてください。

職種/作業名参考記事
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トンネル推進外国人採用でトンネル推進の作業員を雇う方法と特定技能ビザ

他の資格を取得しやすくなる

玉掛け作業の資格を取得すると、他の資格を取得した際、または資格取得における講習時間の短縮などに役立ちます。

また、併用して取得することで実際の作業をするときにも役立つ資格なので、玉掛け作業の資格を取得したら、是非一緒に取得すると仕事の幅が広がるのではないかと思います。

資格/作業名参考記事
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作業のなかで役立つ参考記事

他にも玉掛け作業をする際に是非知っておきたい内容をまとめているので、是非合わせて読んでみてください。

作業名参考記事
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まとめ

今回は、玉掛け作業の資格取得方法と、その仕事内容について解説していきました。

まとめますと、

  • 玉掛けとは、クレーン作業時に荷物にワイヤーなどのロープで吊り上げるための固定などをする作業
  • 玉掛け作業は、落下事故などが多く簡単な作業に見えても危険の伴う作業である
  • 玉掛け作業を行う場合、ワイヤーの選定・吊り荷の荷重を算出して行う
  • ワイヤーの掛け方は、荷物の形状によって異なる
  • 玉掛け作業の資格は、様々な仕事の幅を広げてくれるのに役立つ資格

ですね。

玉掛けとは、荷物を吊るときにワイヤーやスリングベルトで巻きつけて、クレーンのフックに掛けて合図をして巻き上げる仕事になります。

簡単そうですが、ワイヤーの選定や荷物の重さを知らないと出来ない難しい内容です。

ただ経験が無くても取得出来る資格講習なのでぜひ受けてみることをおすすめします。