「一級建築施工管理技士」の学科試験で、毎年出題される「構造地震設計と建物挙動」という重要分野。このテーマは、点数を左右するだけでなく、受験生の多くがつまづいてしまう厄介な箇所でもあります。筆者は1級建築施工管理技士を保有しているものの、この分野には苦労した一人です。そこで、今回はこの難問に立ち向かう受験生のために、頻出キーワードや類似問題に焦点を当て、攻略のヒントを提供します。点数アップを目指す方々にぜひお役立ていただければ幸いです。
1級建築施工管理技士過去問類似問題5問にチャレンジ
第1問:屋上突出部の設計
屋上に設ける煙突や水槽などの突出部に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 屋上突出部は、建物本体に比べて剛性が急変するため、地震の影響を強く受けやすい。
- 屋上突出部の設計における地震力は、一般の階に比べて水平震度を増大させて算出する。
- 屋上突出部は、ムチの先端のように揺れが増幅されるため、非常に大きな水平力が作用する。
- 屋上突出部の剛性を極めて大きくすれば、建物本体への地震力の影響は無視できるようになる。
第2問:エキスパンションジョイント(EJ)
エキスパンションジョイントに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 平面的に長大な建物は、乾燥収縮や不同沈下によるひび割れを防止するため、エキスパンションジョイントで切り離すのが有効である。
- エキスパンションジョイントのあき寸法(クリアランス)は、建物の高さを考慮して決定する必要がある。
- エキスパンションジョイントの間隙(スキマ)が十分でないと、地震時に両側の建物が衝突する恐れがある。
- 異なる構造形式の建物を隣接させる場合、互いに拘束し合うように剛強に連結するのが一般的である。
第3問:短柱(たんちゅう)の破壊
柱の構造的な性質に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 垂れ壁や腰壁が取り付いた柱は、実効的な長さが短くなり「短柱」となるため、地震力が集中しやすい。
- 短柱となった柱は、水平力に対してしなやかに変形できるため、地震被害を受けにくい。
- 短柱の被害を防止するためには、壁と柱の間にスリット(隙間)を設け、構造的に絶縁することが有効である。
- 腰壁などで拘束された短い柱は、脆性(ぜいせい)破壊(急激な破壊)を起こしやすいため、細心の注意が必要である。
第4問:剛性のバランスと被害
上下階の構造バランスに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 耐震壁の配置などにより、上下階の剛性が著しく変化している場合、剛性の小さい階に被害が集中しやすい。
- 1階にピロティ(壁のない空間)がある建物は、上階に比べて剛性が小さくなるため、1階の変形が大きくなりやすい。
- 建物全体の強度が十分であれば、特定の階の剛性が極端に小さくても、地震時の安全性に問題はない。
- 建物の平面的な「ねじれ」を防ぐためには、剛性(かたさ)の重心と重量の重心のズレを小さくすることが重要である。
第5問:地震力と建物の形状
建物の形状と耐震性に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 平面的にL字型やT字型など複雑な形状の建物は、地震時にねじれ振動を起こしやすい。
- エキスパンションジョイントで建物を切り離すことは、複雑な形状の建物を単純な形状の組み合わせに分けるためにも有効である。
- 建物の剛性が高さ方向に均一であれば、地震時の被害は特定の階に集中しにくくなる。
- 建物の高さが高いほど、エキスパンションジョイントに求められるあき寸法は小さく設定される。
1級建築施工管理技士類似問題5問【解答と解説】
- 第1問:4
- 解説: 突出部の剛性を大きくしても、そこにかかる大きな地震力(慣性力)は変わりません。むしろ重くて硬いものほど大きな力を受けやすいため、本体への影響を無視することはできません。
- 第2問:4
- 解説: 構造が違う建物同士を無理に繋ぐと、揺れ方の違いで壊れてしまいます。「あえて切り離す(EJ)」のが正解です。
- 第3問:2
- 解説: 短柱はガチガチに硬くなってしまい、変形できずに「バキッ」と折れて(脆性破壊)しまいます。
- 第4問:3
- 解説: 全体の強度が十分でも、弱い階(剛性が小さい階)に力が集中すると、そこから崩壊してしまいます(ピロティ崩壊など)。
- 第5問:4
- 解説: 背が高いほど揺れ(変形量)が大きくなるため、ぶつからないようにあき寸法は「大きく」設定しなければなりません。
1級建築施工管理技士マンガで説明出題頻度の高いポイントと解説
建物構成・耐震計画の重要ポイント表
| 項目 | 重要度 | 過去問の「ひっかけ」キーワード | 対策のポイント |
|---|---|---|---|
| エキスパンション | ★★★ | 「地震時の衝突を防ぐため、構造体を緊結する」 | 逆!「構造的に分離」してクリアランスを確保する。 |
| 屋上突出部 | ★★★ | 「煙突などの突出部は、一般階より水平震度を小さくできる」 | 鞭のように振られるため、水平震度は大きく(増大)する。 |
| 短柱(たんちゅう) | ★★★ | 「腰壁がある柱は、変形能力が高まり靭性に富む」 | 逆!硬くなって「せん断破壊(ぜい性破壊)」しやすくなる。 |
| 構造スリット | ★★☆ | 「短柱を防ぐため、垂れ壁と柱を密着して打ち込む」 | ダメ!「構造的絶縁(スリット)」で縁を切るのが正解。 |
| 不同沈下 | ★★☆ | 「建物の平面形状が細長いほど、不同沈下に対して有利である」 | 不利!長すぎると歪むので、エキスパンションで分割する。 |
1. 建物に「あそび」を作る:エキスパンションジョイント
キーワード:乾燥収縮、不同沈下、クリアランス(あき寸法)
- 長すぎる建物はキケン:
建物が横に長すぎると、コンクリートが乾燥して縮んだり(乾燥収縮)、地面が少しだけ傾いて沈んだり(不同沈下)したときに、あちこちにひび割れが入ってしまいます。 - 「切り離して」守る:
そこで、建物をあえて途中で切り離してつなぐのが「エキスパンションジョイント」です。 - ぶつからないための「スキマ」:
地震のとき、切り離された建物同士は別々に揺れます。建物の背が高いほど大きく揺れるため、ぶつからないようにスキマ(あき寸法)を十分に空ける必要があります。
2. 屋上の「ポツン」は要注意:屋上突出部
キーワード:煙突、剛性の急変、水平震度
- ムチのようにしなる:
屋上に突き出た煙突や水槽などは、地震のときにムチの先端のように激しく振り回されます。 - 「増し増し」で設計する:
下の建物本体に比べて、屋上の出っ張りは急に形が変わるため、大きな力が集中します。そのため、設計時は「水平震度を大きく(増大させて)」、頑丈に作ることがルールです。
3. ガチガチに固めると折れる:短柱(たんちゅう)
キーワード:垂れ壁、腰壁、構造的絶縁
- 「短い棒」は折れやすい:
柱の横に中途半端な高さの壁(腰壁など)がついていると、柱が自由に動ける部分が短くなってしまいます。これを「短柱」といいます。 - 力が集中する:
長い柱はしなって耐えますが、短い柱はガチガチに硬くなってしまい、地震の力がそこに集中してバキッと折れてしまいます。 - 「縁(ふち)を切る」のが正解:
これを防ぐために、壁と柱の間にスリット(スキマ)を入れて、「構造的に絶縁」(つなげないように)することが重要です。
合格へのワンポイント
試験では「高さを考慮する(EJ)」「震度を増大させる(屋上)」「絶縁する(短柱)」といった動詞の部分がよく問われます。
「長すぎるものは切り離す」「飛び出たものは激しく揺れる」「短く固められた柱は脆い」という物理的なイメージを持っておきましょう!
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※重要度は一級建築施工管理技士の出題傾向に基づきます。