この記事では、チェーンソーを仕事で使用する際に必要な資格の有無、特別教育の必要性、安全な使い方について詳しく解説します。
チェーンソーはDIYでも使われる身近な工具ですが、伐木作業では死亡災害が突出して多い極めて危険な工具です。正しい知識がないまま使用すると、一瞬のミスが即座に重大事故につながります。
ここでは、チェーンソー特別教育の内容・資格の正式名称・伐木手順・労災事例まで、現場で身を守るために必須となる知識をまとめています。
このブログでは他にも資格や工事に関する記事をまとめています。気になる方はこちらから確認できます。
チェーンソー伐木特別教育の必要性と効果

チェーンソーはホームセンターでも購入でき、レンタルも簡単なため気軽に扱える工具と思われがちですが、わずかな操作ミスが手足の切断や死亡といった重大事故に直結する危険な工具です。
個人使用では資格不要ですが、仕事(業務)で使用する場合は労働安全衛生法により特別教育の修了が必須です。
特別教育を受講せずに作業させると安全衛生法違反となり、労災発生時には事業者が厳しい処罰の対象になります。
チェーンソーの安全性とよくある事故の要因
チェーンソーはエンジンの動力でチェーンが超高速回転し、一般的な電動工具よりも圧倒的に引き込む力や反発力が強いため、チェーン外れや「キックバック」による事故が多発します。
キックバックとは、ガイドバー(剣)の先端上半分の「キックバックゾーン」が木や障害物に触れた瞬間、強烈な力でチェーンソーが作業者の顔や上半身に向かって跳ね返る現象です。これにより首・顔・腕などに接触し、致命傷を負う事故が後を絶ちません。
チェーンソーでの労働災害事例
千葉県の伐木作業現場で、伐倒した木が近くで玉切り作業をしていた労働者に激突し死亡。事業者は特別教育を実施しておらず書類送検された。
労働新聞社より
鹿児島県の伐採作業中、伐倒した木と一緒に倒れてきた別の木が労働者に激突し死亡。特別教育未実施が発覚し、事業者が書類送検された。
労働新聞社より
このような「伐倒木の激突(下敷き)」や「キックバックによる切創」を防ぐためにも、特別教育の受講と正しい作業手順の徹底が必須です。
チェーンソー用防護チャプスの重要性
法令により、チェーンソー作業時は下肢の切創防止用保護衣(チャプスまたは防護ズボン)の着用が完全義務化されています。
キックバックや惰性回転による太ももの切断(大動脈損傷)事故を防ぐため、必ず着用しましょう。あわせて、顔面を守るフェイスシールド付きヘルメットや防振手袋の使用も強く推奨されます。
チェーンソー特別教育の改訂ポイント
林業や建設業での労働災害の多発を受け、チェーンソー特別教育は令和2年(2020年)8月1日に大きく改正(統合・強化)されました。
これにより、以前の「(大径木・小径木などの)伐木等作業の特別教育」は無効となり、移行のための補講期間もすでに終了しています。過去の旧資格しか持っていない方は、現在の新規格の特別教育を再度受講し直す必要があります。
チェーンソー資格の正式名称
現場や教育機関によって呼び方が異なりますが、現在有効な正式名称と通称は以下の通りです。
- 【正式名称】伐木等の業務に係る特別教育
- チェーンソーによる伐木等特別教育(通称)
- チェーンソー特別教育(通称)
チェーンソー特別教育の受講資格
18歳以上であれば、実務経験を問わず誰でも受講可能です。
学科内容(合計9時間)
- 伐木作業に関する知識(4時間)
- チェーンソーに関する知識(2時間)
- 振動障害とその予防に関する知識(2時間)
- 関係法令(1時間)
実技内容(合計9時間)
- チェーンソーの点検・整備(2時間)
- チェーンソーの操作(2時間)
- 伐木等の方法(5時間)
林業・建設現場のためのチェーンソー伐倒手順

法改正により、立木の伐倒では「胸高直径40cm以上」から「20cm以上」に対象が拡大され、より細い木であっても正しい「受け口・追い口・つる」を作って伐倒する手順が厳格に義務化されました。
- 退避場所の確保:伐倒方向の斜め後方(45度など)に、すぐに逃げられる退避ルートを先に確保・清掃する。
- 受け口:倒したい方向に、幹の直径の1/4〜1/3程度の深さで、30〜45度の斜め切り込みを入れる。
- 追い口:受け口の反対側から、受け口の底面より少し高い位置を水平に切り込む。
- つる(ツル):切り落とさずに木の直径の1/10程度の「つる(蝶番の役割)」を残し、倒れる方向を安全に制御する。
チェーンソー伐採で最も危険な「かかり木」とは?

かかり木とは、伐倒した木が途中で別の立木(立っている木)の枝などに引っかかって倒れきらず、宙吊りになっている状態を指します。いつ落ちてくるかわからない非常に危険な状態です。
現場での死亡事故の多くは、この「かかり木の処理」中に発生しています。
「かかり木の下に入らない」「掛かられている木(元木・支持木)を伐り倒そうとしない」「かかり木に登らない」は絶対の鉄則です。処理には専用の牽引具(チルホールやウインチ)や重機などの専門的なロープワーク処置が必要です。
まとめ:チェーンソーの安全は正しい知識と保護具から
- チェーンソーの個人使用は資格不要だが、仕事(業務)では特別教育が法令で必須。
- キックバックや伐倒木の激突など、致命的な事故が多いため安全教育が極めて重要。
- 現行の特別教育は学科9時間+実技9時間の計18時間(約3日間)。
- 令和2年の法改正により、過去の旧資格(大径木・小径木など)は無効になっている。
- 防護チャプス(防護ズボン)などの保護具着用が完全義務化されている。
チェーンソーは現場作業を圧倒的に効率化する便利な工具ですが、誤った使い方や知識不足は即座に自分や仲間の命を奪う重大事故につながります。必ず特別教育を受講し、ルールを守って安全に作業を行いましょう。