この記事で学べること
・「水道直結増圧方式」と「受水槽方式」の衛生管理、省スペース、停電時対応の違い
・ウォーターハンマー(水撃作用)の発生原因と、防止のための「管径算定(流速制限)」
・中央式給湯設備において熱膨張を吸収・逃がす「伸縮継手」と「逃し弁」の役割
・ヒートポンプ給湯機(エコキュート)の大気熱利用メカニズムと自然冷媒(CO2)の採用
【出題傾向】出題度:毎年必ず出る(管工事の専門分野)
管工事施工管理技士試験の第一次検定における「専門工学(給水・給湯設備)」は、建物のライフラインを担う水とお湯の設計・施工ルールを問う最重要科目です。特に、機器の名称と目的を入れ替えた引っかけ(例:伸縮継手と防振継手の混同)や、ウォーターハンマーの物理的な原因(流速が速いか遅いか)を問う問題が毎年必ず出題されます。
この記事では、試験対策に必須の重要ポイントを直感的にイメージできるよう構成しています。文字の丸暗記ではなく、「なぜ水が汚れるのか」「なぜ配管から衝撃音が鳴るのか」という物理的な理由をビジュアルで把握してから、詳細な解説文を読み進めていきましょう。
【給水設備(直結増圧方式と受水槽・高架水槽方式の衛生管理比較)】1級・2級管工事施工管理技士 第一次検定過去問のわかりやすい覚え方
まずは給水方式の全体像から丁寧に整理します。建物の上の階に水を運ぶ方法には、一度タンクに水を貯める方式と、ポンプで直接押し上げる方式があり、それぞれ衛生面や災害時の特徴が明確に分かれます。

受水槽・高置(高架)水槽方式の特徴
水道本管の水を1階や地下の「受水槽」に一旦貯め、揚水ポンプで屋上の「高置水槽」へ送り、そこから重力で各階へ給水する昔ながらの方式です。
- 長所:水槽に大量の水が貯まっているため、水道本管が断水した場合や停電時でも、水槽内に水が残っている間は給水が可能です。また、給水圧力が常に一定です。
- 短所:水がタンク内に滞留するため、水質汚染のリスクがあります。そのため、法律で年1回の受水槽の定期清掃や水質検査が厳しく義務付けられています。また、水槽を設置する大きなスペースが必要です。
水道直結増圧方式の特徴
水道本管の配管に直接「増圧給水ポンプ」を接続し、本管の水圧にポンプの圧力を足して、中高層階まで直接水を押し上げる新しい方式です。
- 長所:受水槽を経由しないため、水がよどんだりゴミが混入したりするリスクがなく、極めて衛生的(水質が良い)です。受水槽の設置スペースや定期清掃の手間も不要になります。
- 短所(停電時の特徴):停電するとポンプが止まります。ただし、水道本管の圧力が届く範囲の低層階(1〜3階程度)であれば、停電時でも給水が可能です(全館完全断水にはなりません)。本管自体が断水した場合は水が出ません。
演習問題
【問題】建築物の給水方式に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
- 高置水槽方式は、受水槽および高置水槽に水を貯留するため、水道本管の断水時であっても水槽内に水が残っていれば給水が可能である。
- 高置水槽方式は、水槽内で水が滞留するため水質汚染の可能性があり、定期的な水槽の清掃や水質管理が必要となる。
- 水道直結増圧方式は、受水槽を設けないため省スペース化が図れ、水道本管の新鮮な水が直接供給されるため衛生面に優れている。
- 水道直結増圧方式は、停電等により増圧給水ポンプが停止した場合、水道本管の圧力に関わらず、建物のすべての階で完全に給水が停止する。
【解答】4
【解説】
1. 適当。水槽方式のメリット(断水時のバックアップ)です。
2. 適当。水槽方式のデメリット(衛生管理コスト)です。
3. 適当。直結増圧方式の最大のメリット(衛生的・省スペース)です。
4. 不適当。水道直結増圧方式において増圧給水ポンプが停止した場合、上層階への給水は止まりますが、水道本管自身の水圧が届く範囲である「低層階(1階〜数階程度)」に対しては、停電時であっても給水を継続することが可能です。全階で完全に停止するわけではありません。
【給水設備(給水管の必要管径算定・摩擦抵抗線図とウォーターハンマー対策)】1級・2級管工事施工管理技士 第一次検定過去問のわかりやすい覚え方
現場の感覚では「水圧が弱いとクレームになるから、ポンプの圧力を上げて細い配管で勢いよく水を流せばよい」と思いがちですが、ここを取り違えると確実に落とされるため注意が必要です。配管の中で水が速く走りすぎると、急ブレーキをかけたときに強烈な破壊力が生まれます。

ウォーターハンマー(水撃作用)の恐怖
シングルレバー水栓や電磁弁など、水の流れを「一瞬で止める(急閉する)」バルブを操作したとき、壁の中で「ドン!」「カン!」という激しい衝撃音が鳴る現象をウォーターハンマー(水撃作用)と呼びます。
これは、管の中を猛スピードで走っていた水の「運動エネルギー」が、バルブが急に閉まったことで逃げ場を失い、一気に「圧力エネルギー(衝撃波)」に変換されて配管や継手に強烈な打撃を与える現象です。放置すると配管が破裂したり、水漏れの原因になります。
防止対策と必要管径の算定
ウォーターハンマーを防ぐためには、以下の対策が必須です。
- 1. 流速を遅くする(管径を太くする): 猛スピードで走る水ほど衝撃が大きくなります。給水管のサイズ(口径)を決める際は、単に水量が足りるかだけでなく、ウエストン公式や摩擦抵抗線図を用いて、「管内の流速が速くなりすぎない(一般に 1.5〜2.0m/s 以下)適切な太さ」に管径を大きくして算定する必要があります。
- 2. 水撃防止器(ウォーターハンマーアレスター)の設置: 急閉弁のすぐ近くに、衝撃圧力を空気のクッション等で吸収する装置を取り付けます。
- 3. 急閉弁を避ける: 可能であれば、ゆっくりと閉まるバルブを採用します。
演習問題
【問題】給水設備におけるウォーターハンマー(水撃作用)とその防止対策に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
- ウォーターハンマーは、シングルレバー水栓や電磁弁などの急閉鎖によって管内の流速が急激に変化し、異常な圧力上昇が生じる現象である。
- ウォーターハンマーの発生による配管の振動や継手の破損を防止するため、急閉弁の一次側直近に水撃防止器(エアチャンバ等)を設置する。
- ウォーターハンマーを根本的に防止するためには、摩擦抵抗線図等を用いて給水管の管径を算定する際、管内の平均流速が過大にならないよう適切な太さを選定する。
- 給水圧力が高い高層階においては、ウォーターハンマーの影響を小さくするため、給水管の管径を意図的に細く絞り、管内の流速を極力速くする設計が推奨される。
【解答】4
【解説】
1. 適当。ウォーターハンマーの原因(流速の急変・圧力上昇)の正しい定義です。
2. 適当。水撃防止器(アレスター)の設置による物理的対策です。
3. 適当。管径を太くして流速を抑えることが、設計上の最大の予防策です。
4. 不適当。ウォーターハンマーの破壊力は、水の流速に比例して大きくなります。したがって、給水管の管径を細くして流速を「速く」することは、ウォーターハンマーをより悪化・激化させる最悪の設計です。衝撃を和らげるためには、管径を「太く」して流速を「遅く」しなければなりません。
【給湯設備(中央式給湯の循環配管システムと伸縮継手・逃し弁の施工基準)】1級・2級管工事施工管理技士 第一次検定過去問のわかりやすい覚え方
この単元は深追い不要。試験では“キーワード反応型”でOKです。次のポイント(熱で伸びる配管を守るのが『伸縮継手』、熱で膨らむ水の圧力を逃がすのが『逃し弁』)だけ覚えれば、給湯配管の安全装置の問題は確実に得点できます。

中央式給湯設備の循環システム
ホテルや病院などで、地下の機械室のボイラーで大量のお湯を作り、各階の蛇口まで配管を伸ばす方式です。お湯が冷めないよう、使っていなくても循環ポンプで配管内を常にお湯がぐるぐると循環しています(これを返湯管・循環方式と呼びます)。これにより、蛇口を開けた瞬間に熱いお湯が出る(即湯性がある)のが最大の特徴です。
熱による膨張と2つの安全装置
お湯を扱う配管特有の大きな物理法則として、「金属は熱で伸びる」「水は温めると体積が増える」という2つがあり、これに対する逃げ道を必ず作らなければなりません。
- 伸縮継手(しんしゅくつぎて):➔ キーワード「配管の伸び縮み対策」
配管に高温のお湯が通ると、配管の金属自体が熱で膨張し、数センチも長く伸びます。真っ直ぐな長い配管だと、壁を突き破ったり配管が折れ曲がったりします。これを防ぐため、ジャバラ状の「ベローズ形伸縮継手」や、コの字型に配管を曲げて逃げを作る「スィーベル形・ループ形」を設け、配管の伸び縮み(熱応力)を吸収します。 - 逃し弁・膨張管:➔ キーワード「水の体積膨張(圧力)対策」
密閉された貯湯タンクや配管の中で水が加熱されると、水の体積が増えて圧力が急上昇し、タンクが破裂してしまいます。これを防ぐため、設定圧力を超えたらお湯を外にチョロチョロと捨てて圧力を下げる「逃し弁」や「逃し管(膨張管)」を必ず設置します。
演習問題
【問題】給湯設備の配管施工および安全装置に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
- 中央式給湯設備において、末端の給湯栓から常に適切な温度の湯を供給できるよう、循環ポンプと返湯管を設けて配管内の湯を循環させる方式がとられる。
- 給湯配管は、管内の温度変化に伴って管自体が伸縮するため、その熱膨張・収縮による応力を吸収するための伸縮継手(ベローズ形等)を直線部の途中に設ける。
- 密閉式の加熱装置や貯湯タンクには、水の加熱に伴う体積膨張による異常な圧力上昇を防ぎ、機器の破裂を防止するための逃し弁や膨張管を設置しなければならない。
- ポンプの振動が配管に伝達するのを防ぐため、配管の直線部分に発生する熱膨張の吸収には「防振継手」を用いるのが最も効果的である。
【解答】4
【解説】
1. 適当。中央式給湯の循環システムと即湯性の仕組みです。
2. 適当。配管自体の熱伸縮を吸収する「伸縮継手」の正しい役割です。
3. 適当。水の体積膨張圧力を逃がす「逃し弁・膨張管」の正しい役割です。
4. 不適当。配管の熱膨張・収縮を吸収するために用いるのは「伸縮継手(ベローズ形やスリーブ形など)」です。「防振継手(ゴム製など)」はポンプ等の機械の振動を遮断するためのものであり、熱で伸びる数十ミリもの変位を吸収することはできません。継手の名称と役割をすり替えた頻出の引っかけです。
【給湯設備(エコキュート・ヒートポンプ給湯機の仕組みと貯湯タンク施工)】1級・2級管工事施工管理技士 第一次検定過去問のわかりやすい覚え方
「現場の感覚では〇〇(※電気でお湯を沸かすのだから、電気ケトルのように電気の熱エネルギーと水の温まり方は1対1の等価だろう)ですが、検定試験では真逆の判断が正解になることがあります。ここを取り違えると確実に落とされるため注意が必要です。」ヒートポンプ給湯機(エコキュートなど)は、電気の熱で水を温めるのではなく、電気の力で「空気中に漂っている熱をかき集めてくる」という魔法のような装置です。

ヒートポンプ給湯機(エコキュート)の原理
エアコンの室外機と同じ仕組みで、屋外の空気中にある「熱エネルギー」を冷媒(ガス)を使って取り込み、コンプレッサー(圧縮機)でギュッと圧縮して高温にし、その熱を水に伝えてお湯を作るシステムです。
- 自然冷媒(CO2)の採用:家庭用や業務用のヒートポンプ給湯機(通称:エコキュート)では、オゾン層を破壊せず地球温暖化係数も極めて低い、自然冷媒である「二酸化炭素(CO2)」を冷媒として採用しています。
- COP(成績係数)が「1より大きい」:このシステムは、消費した電気エネルギー(1)と、空気中から拾ってきた熱エネルギー(2)を合体させて、大きな熱エネルギー(3)を生み出します。つまり、「使った電気以上の熱を生み出す(成績係数 COP が3〜4など、1よりはるかに大きくなる)」ため、従来の電気ヒーター式温水器に比べて極めて省エネ・高効率です。
- 貯湯タンクの活用:電気代が安い深夜の電力を利用してヒートポンプを回してお湯を作り、大きな貯湯タンクに保温して貯めておき、昼間にそれを使う(ピークシフト)ことでランニングコストを抑えます。
演習問題
【問題】ヒートポンプ給湯機(エコキュート等)に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
- ヒートポンプ給湯機は、大気中から集めた熱エネルギーを圧縮機で高温にし、それを給水に伝達してお湯を製造する省エネルギー型の給湯システムである。
- エコキュートと呼ばれるヒートポンプ給湯機には、環境負荷を低減するため、冷媒としてオゾン層破壊係数がゼロである自然冷媒の二酸化炭素(CO2)が採用されている。
- 貯湯式ヒートポンプ給湯システムは、電力需要の少ない深夜電力を利用して貯湯タンクに湯を作って貯蔵し、昼間の給湯負荷を賄うことでランニングコストの低減を図る。
- ヒートポンプ給湯機の成績係数(COP)は、電気ヒーターによる直接加熱方式と同様に、投入した電気エネルギーと等しい熱エネルギーしか得られないため、最大でも「1」となる。
【解答】4
【解説】
1. 適当。空気の熱を利用するヒートポンプ給湯の基本原理です。
2. 適当。エコキュートの最大の特徴である「CO2冷媒」の正しい記述です。
3. 適当。夜間に沸かしてタンクに貯める、貯湯式の運用上のメリットです。
4. 不適当。ヒートポンプ給湯機は、投入した電気エネルギーに加えて「大気中から無償で集めた熱エネルギー」を利用するため、消費した電気エネルギーの3〜4倍もの熱エネルギーを得ることができます。つまり、成績係数(COP)は「1よりはるかに大きく」なります。COPが最大1にしかならない電気ヒーター式と混同させる嘘記述です。
まとめ
今回学んだ管工事施工管理技士・専門工学(給水・給湯設備)の重要ポイントをおさらいしましょう!
- 「水道直結増圧方式」は受水槽を持たないため衛生的で、省スペースに優れる。
- ウォーターハンマーを防ぐため、給水管は「管径を太くして流速を遅く(制限)」する。
- 給湯配管の熱による伸びを吸収するのは「伸縮継手」、水の体積膨張による圧力を逃がすのは「逃し弁」。
- エコキュートは「CO2冷媒」を使い、空気の熱を集めるためCOP(効率)が「1より大きく」なる。
給排水設備の問題は、「なぜその現象が起きるのか(速いから音が鳴る、熱いから膨らむ)」という物理法則と、それを解決する「部品の名前(水撃防止器、伸縮継手など)」の組み合わせテストです。水とお湯の振る舞いをイメージしながら、確実な得点源にしていきましょう!
