この記事では、特定化学物質を扱う際の資格と資格講習の内容について解説していきます。
また、間違えやすい「特定化学物質」と「有機溶剤」の違いについてもあわせて解説していきます。
特定化学物質を扱うときは、特化物講習と言われる資格講習を受けなければならないとされています。
しかし、どんなことを習うのか、とかどういったものを取り扱うことができるのかよくわからないですよね。
そこで、特定化学物質の資格を取得するとどういった仕事ができるのか、また特化物と混同しやすい有機溶剤について解説していきたいと思います。
特定化学物質作業主任者技能講習のポイントとは?

特化物(通称:特化物)とは、簡単にいうと
労働安全衛生法によって規定された、労働者が体内に取り込むと健康障害を起こす可能性が高い化学物質。この物質を取り扱う事業者は特定化学物質障害予防規則により、さまざまな規制が定められている。このうち、微量な暴露でがんを引き起こす物質は特別管理物質として、より厳しい管理が求められる。
引用:デジタル大辞泉
とされています。
そして、特定化学物質に定められている物質は3つに分類されております。それぞれ
- 第1類物質
- 第2類物質
- 第3類物質
と分類されています。
特定化学物質 第1類物質リストの解説
第1分類に指定されている物質は、
がん等の慢性障害を引き起こす物質のうち、特に有害性が高く、製造工程で特
ウィキペディアより
に厳重な管理(製造許可)を必要とするもの
と、されています。
つまり、慢性的な健康被害(がんなど)を及ぼすものに対しては、製造許可がなければ製造できませんと定められているということです。
この第1類物質に定められている物質は、ジクロルベンジン・ジアニシンジン・ベリリウムなどといった化合物・塩を含むものです。
特定化学物質 第2類物質リストの解説
第2類物質に定められている物質は、
がん等の慢性障害を引き起こす物質のうち、第1類物質に該当しないもの
ウィキペディアより
とされています。
つまり、第1類に比べて毒性は低いですが、慢性的な健康被害を及ぼす物質と定められているということです。
この第2類物質に定められているものは、シアン化水素・ホルムアルデヒド・硫化水素などの物質が分類されています。
特定化学物質 特化物第3類物質リストの解説
第3類物質に定められている物質は、
大量漏えいにより急性中毒を引き起こす物質
ウィキペディアより
とされています。
第1・第2分類物質に該当しませんが、急性中毒を引き起こす危険性のあるものが分類されています。
この第3類に指定されている物質は、アンモニア・一酸化炭素・塩化水素などの物質になります。
他にも、様々な物質が定められているので、詳しくはこちらを参考にしてみてください。
特定化学物質の安全管理には必須: ラベル表示の重要性
実際の現場ではラベル表記でわかるように、納品されたセメントなど材料にはマークがあります
例えば、塗料とかの容器をよーく見てください

特化物を取り扱う場合には、ラベルマークを使って特化物の危険性を視認してもらうよう定められています。
このマークは、「GHS(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)マーク」という、国連GHSが定めたマークをつけるようにしましょうと国際的にも定められています。
では次のページでGHSについて特化物の用語について説明していきますので、そのあとに有機溶剤との違いも説明していきたいと思います
GHSの重要性:特定化学物質の分類と表示

GHSの目的は、
GHSは、化学品の危険有害性に関する情報を、それを取り扱う全ての人々に正確に伝えることによって、人の安全・健康及び環境の保護を行うことを目的としています。
ーGHS対応-化管法・安衛法・毒劇法におけるラベル表示・SDS提供制度
GHS導入による安全性向上のメリット
- 人の健康や環境の保護を強化
- 化学品の試験・評価の重複を回避
- 事業者の負担軽減と国際競争力の強化に貢献
- 自社の安全性のイメージ向上に寄与
といったことがメリットとして挙げられます。
HS(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)表示方法の基本概念と特定化学物質の解説について、以下で簡潔に説明いたします。
GHSは、国連が策定した化学品の分類および表示に関する世界的な基準です。その目的は、人々の安全・健康、そして環境の保護を目的としており、危険性や有害性について正確な情報を提供することで化学品を扱う際のリスクを最小限に抑えることが重要です。
GHS表示方法は、次の3つの要素で構成されています。
- 化学品の分類:物質がどのような危険性や有害性を持つかを適切に分類することが重要です。例えば、毒性や腐食性などが該当します。
- ラベル表示:絵表示や記号を用いて、分かりやすく化学品の危険性を表現します。例えば、火災促進剤や爆発物の印象です。
- 安全データシート(SDS):化学品の取り扱い方法や保管方法、緊急時の対処法など詳細な情報を提供します。
また、特定化学物質においてはGHS分類基準に従って評価されます。これは物質ごとに異なりますが、例えば「急性毒性」や「皮膚腐食/刺激性」、「発がん性」、「生殖毒性」などがあります。
特定化学物質はこれらの分類基準に基づきラベル表示されるため、消費者や労働者が適切な対策を取れるようになります。SDS作成やラベル表示も適切であれば事故や健康被害を防ぐ上で重要です。
GHS表示方法の基本概念と特定化学物質の解説
特定化学物質を表示するマークは9種類に分かれています。
- 爆弾の爆発(爆発物・自己反応性化学品・有機酸化物)
- 炎(可燃性・自然発火ガス・引火性液体等12種類の物質)
- 円上の炎(酸化性ガス・酸化性液体・酸化性固体)
- ガスボンベ(高圧ガス)
- 腐食性(金属腐食性化学品・皮膚腐食性・目に対する重篤な損傷性)
- どくろ(急性毒性)
- 感嘆符(皮膚刺激性・目刺激性・皮膚感作性等といった6種類の物質)
- 健康有毒性(呼吸器感作性・発がん性・生殖毒性等といった7種類の物質)
- 環境(水性環境有毒性)
に分けられ、表示されています。
また、表示する際は、
- 化学品の名称
- 注意喚起語(危険と警告の2種で説明)
- 絵表示
- 危険有害性情報
を書くように定められています。
また、厚生労働省のサイトから適宜、特定化学物質に対する通達が出ているので特化物を取り扱う方はこまめにチェックしておくと良いでしょう。
では特化物と有機溶剤の違いとは?その中で、取得すべき技能講習の内容をこの次に記載していきたいと思います。
知っておくべき有機溶剤と特化物の本質的な相違点

特定化学物質と有機溶剤はしばしば混同して扱われることがありますが、どちらも取り扱うことができる資格が全く違います。
有機化合物の基礎知識: 有機溶剤とは何か?
有機溶剤とは、他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物の総称であり、様々な職場で、溶剤として塗装、洗浄、印刷等の作業に幅広く使用されています。
引用:有機溶剤中毒を予防しましょう
有機溶剤は常温では液体ですが、一般に揮発性が高いため、蒸気となって作業者の呼吸を通じて体内に吸収されやすく、また、油脂に溶ける性質があることから皮膚からも吸収されます。
といった物資を指します。
例えば、クロロホルムやアセトン・ガソリンといった物質が含まれています。
また、有機溶剤として定められている物質は、有機溶剤中毒予防規則で定められています。
指定物質はどんどん増えてますので最新を確認してください。
有機溶剤と特化物の比較:違いを解説
一方、特定化学物質は、主にがん・皮膚炎・神経障害を発症させる可能性のある物質を指します。
つまり、これらの違いは定められている規則に違いがあるということです。
- 有機溶剤…有機溶剤中毒予防規則
- 特定化学物質…特定化学物質障害予防規則
そして、それぞれ定められている規則が違うことから扱える資格も違うので、今回紹介する特化物の資格を取ったからといって有機溶剤も扱うことはできないことは注意しておきましょう。
下の記事では、そんな有機溶剤を扱う資格の取得方法について解説しているので是非特化物と合わせて取得すると良いかと思います。
この記事では、有機溶剤の取り扱いについて、その危険性と特別教育と技能講習について解説していきたいと思います。有機溶剤って危険物になるのかな?特定化学物質と何が違うのかな?と、このように有機溶剤とはどのような資格や講習を受け[…]
特定化学物質作業主任者講習とは

では、特化物の講習について解説していきます。
今回紹介する講習の内容は、「特定化学物質作業主任者」または「四アルキル鉛等作業主任者」になるための資格講習です。
これらの資格講習は同じ内容になっているので合わせて解説していこうと思います。
特定化学物質作業主任者の仕事内容
(1)作業に従事する労働者が特定化学物質により汚染され、またはこれらを吸入しないように、作業の方法を決定して労働者を指揮
(2)局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置、排液処理装置その他労働者が健康障害を受けることを予防するための装置の点検
(3)保護具の使用状況を監視する
作業主任者技能講習JAWA
こうしたことを主としています。
四アルキル鉛等作業主任者の仕事内容
(1)作業に従事する労働者が四アルキル鉛により汚染され、またはその蒸気を吸入しないように、作業の方法を決定して労働者を指揮
(2)換気装置の点検
(3)保護具の使用状況を監視
(4)中毒の恐れがある場所からの退避や除染作業等の緊急対応を行う
作業主任者技能講習JAWA
ことを主としています。
四アルキルとは、四メチル鉛、四エチル鉛、一メチル・三エチル鉛、二メチル・二エチル鉛および三メチル・一エチル鉛並びにこれを含有するアンチノック剤のことを指します。
これらの物質を取り扱う資格のことを四アルキル鉛等作業主任者と呼んでいます。
資格講習の受講条件
受講資格は特に定められておらず、満18歳以上であれば受講することができます。
講習内容
労働安全衛生法別表第20第11号に基づき、有資格者の講師により
- 「化学物質関係作業主任者技能講習規程」(平成6年告示65号)
- 「石綿作業主任者技能講習規程」(平成18年告示26号)
に規定する科目、時間、カリキュラムにより講習を行います。
講習内容は以下の通りです。
①健康障害及びその予防措置に関する知識 4 時間
②保護具に関する知識 2 時間
③作業環境の改善方法に関する知識 4 時間
④関係法令 2 時間
講習は、講義講習によりそれぞれ2日間にわたって行います。
講習終了後、修了試験が実施され、合格すると資格を取得することができます。
技能講習を取得するメリット

自分の成長過程で作業資格や技能講習を受けた後は、「取得した資格に見合った仕事を行う」「日常業務で活かす」「他者への指導・支援」など意識的な行動が求められます。しっかりと目標を設定し、効果的にスキルアップへつなげていくことが肝要ですね自身のスキルアップは単なるキャリア形成だけでなく、個人や企業全体の競争力向上に欠かせない要素です。作業資格や技能講習を通じて身につけたスキルは、将来へつながる投資でもあります。私も様々な作業主任者や重機関連の資格を取りましたがこれは今、役に立ってますね今後取得するならこういう資格を目指すのもいいですね。
業種別職人から施工管理へ現場で役立つ資格をまとめ
私も施工管理になる前は現場職人でした。土木系なのでやはり土木施工管理技士を取得しましたね。良ければチェックしてみてください
土木系 | 土木施工管理技士 | ||
建築系 | 建築施工管理技士 | 建築士 | |
電気系・設備系 | 管工事施工管理技士 | 電気施工管理技士 | 電気通信施工管理技士 |
給水装置工事主任技術者 | 2級ボイラー技士 | 消防設備士四類 |
この記事にまとめている技能講習一覧
技能講習一覧をまとめたこの記事についてご紹介いたします。技能講習は、労働現場において特定の作業を行う際に必要なスキルや知識を習得するための重要な取り組みであり、安全性と生産性の向上に貢献します。この一覧には、様々な職種における技能講習が含まれており、それぞれの分野で必要とされるスキルや手法を網羅しています。まず、建設業界における高所作業や重機操作などの技能講習が挙げられます。これらの講習は、安全意識を高め労働災害を防止することを目的としています。また、製造業ではフォークリフト操作や化学物質取り扱いなど、特定の作業に必要な技術や扱い方を身につけるための講習があります。
技能講習 早見表 | |
木材加工用機械 | フォークリフト |
プレス機械 | 不整地運搬車 |
乾燥設備 | 高所作業車 |
コンクリート破碎器 | ショベルローダー |
地山の掘削 | 小型移動式クレーン |
地山の掘削および土止め | 床上操作式クレーン |
土止め支保工 | 車両系(解体用) |
ずい道(掘削) | 車両系(基礎工事) |
ずい道(覆工) | 車両系(整地) |
採石 | 玉掛け |
はい作業 | ボイラー取扱 |
船内荷役 | ボイラー据付け |
型枠支保工 | 鋼橋架設 |
コンクリート解体 | コンクリート橋架設 |
足場組立て | 鉄骨組立て |
鉛 | 木造建築物組立て |
特定化学物質 | 酸素欠乏・硫化水素 |
四アルキル鉛 | 酸素欠乏 |
特定化学物質および四アルキル鉛 | 普通圧力 |
有機溶剤 | 化学圧力 |
ガス溶接 | 石綿 |
オンデマンドで受講が出来る特別教育・安全教育はこちら
オンデマンド講習資格取得 | 講習の解説を詳しく説明 | オンデマンド講習資格取得 | 講習の解説を詳しく説明 |
職長安全衛生教育 | 解説! | 低圧電気取扱者特別教育 | |
足場の組立等特別教育 | 解説! | 玉掛け特別教育 | 解説! |
フォークリフトの運転の業務に係る特別教育 | 解説 | チェーンソーによる伐木等特別教育 | 解説! |
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振動工具取扱作業者安全衛生教育 | 解説! | 自由研削といしの取替え等業務特別教育 | 解説! |
フルハーネス型墜落制止用器具特別教育 | 解説! | コンクリートポンプ車特別教育 | 解説! |
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事業者の選任条件
事業者は特化物や四アルキル等を取り扱う現場では、このように選任するよう定められています。
事業者は、労働災害を防止するため、一定の有害な化学物質(特定化学物質)またはそれらを一定以上含有する製剤その他の物を製造し、または取扱う作業については、「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者のうちから、「特定化学物質作業主任者」を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければならないこととされています(労働安全衛生法第14条、特定化学物質障害予防規則第19条、第19条の2)。
また、事業者は、労働災害を防止するため、四アルキル鉛を製造する作業または四アルキル鉛もしくは加鉛ガソリンを取り扱う一定の作業については、遠隔操作によって隔離室で行う場合を除き、「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者のうちから、「四アルキル鉛等作業主任者」を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければならないこととされています(労働安全衛生法第14条、四アルキル鉛中毒予防規則第14条、第15条)。
作業主任者技能講習JAWA
まとめ
今回は特化物と有機溶剤の違い、特化物の資格内容について解説していきました。
少し、法律や規則が絡んで難しかったのではないかと思いますがいかがでしたでしょうか?
まとめますと…
- 労働安全衛生法によって規定された、労働者が体内に取り込むと健康障害を起こす可能性が高い化学物質。
- 特定化学物質は第1類~第3類と分類されている
- 特定化学物質を取り扱っていることを視認させるGHSマークをつけるよう定められている
- GHSマークは国連で定められている世界共通のマーク
- 特定化学物質と有機溶剤の違い定められている規則が違い、取得する資格も違う
- 資格取得の際は満18歳以上であれば、誰でも受けられる
- 受講時間は二日間に渡って開講される
- 事業者は、労働災害を防ぐためにも特定化学物質を扱うときは、資格保有者を選任し従事させなければならない
ですね。
どの物質かなど、それぞれ扱う時に注意しなければならないものが多くあるので正直面倒だな、なんて思ってしまうかもしれませんが、今回紹介したものはどれも健康被害を及ぼすものばかりです。
安全に作業をするためにも、こうした危険物があるということをしっかり理解して労働災害を未然に防ぐようにしましょう。