この記事では、「玉掛け作業」の技能講習について解説していきたいと思います。また、一見簡単そうに見える玉掛け作業で労災事故が多い原因を踏まえながら、どのように安全対策を行っていくかも合わせて解説していきたいと思います。
玉掛け作業ってどんなときに使うのかな?と、そもそも玉掛け作業ってどんなときに使うのかよく分からないかたもいるのではないかと思います。
実は、玉掛け作業は建設業だけでなく、製造業や運送業などでも知っておくべき作業内容になります。
また、この玉掛け作業は一見すると簡単そうに見える作業ですが、意外と労災事故の多い作業なのです。
そのため、玉替け作業に関わる技能講習は受講しておかなければならないと定められています。
そこで、今回は玉掛技能講習で資格取得する方法と特別教育で更にスキルを伸ばす知識を解説していきます。
玉掛け作業とは?

玉掛けは、荷物にワイヤーや帯を巻いてクレーンのフックに引っかける作業です
なんだか簡単に感じる作業ですよね。
ですが、正しい玉掛け作業を行わなければ、労災事故を招く危険な作業です。
この、事故が起きやすい原因や資格を取得する内容については後ほど解説していきます。
クレーン・玉掛の合図の方法は?ゴーヘイ意味コースラー意味を説明
クレーン作業を行う場合、オペレーターと呼ばれる運転者と下で誘導する誘導員の二人三脚で作業に当たります。
クレーン運転席からでは、死角が多く、また積荷との距離が分かりづらいことからこのような配置で作業を行います。
クレーンに玉掛け者はオペレーターに荷物を動かして欲しい場所や降ろしてもらいたい場所に、手で合図します。
この合図の仕方は、玉掛け作業をする人であれば必ず知っておくべき内容なので、合わせて覚えておくようにしましょう。
玉掛合図の意味「ゴーヘイ」「スラー」

他にも、クレーンのオペさんと連携するのに無線や声で合図することあります。
クレーンでの合図は鳶さんとかカッコよくやります。
例えばメジャーな職人あるあるですが・・・
- 「ゴーヘイ」:荷物吊り上げの際にオペに巻き上げ
- 「スラー」:荷物を下げるときにオペさんに巻き下げ
とかが普通ですが、鳶さんとかになるともっといい感じなります。
コースラーとかの玉掛合図もあります
- 「チョイ上げ、チョイ下げ」:クレーンのフックのを少しあげてとかいうこと
- 「親スラ子ゴーヘイ」:ブームを下げて、フックを巻き上げ
- 「チョイ親ゴー子ゴー」:少しブームあげて、フックを巻き上げ
- 「高速ゴーヘイ」:フックを勢いよく巻き上げて
とか暗号ではありませんがこのような指示が飛びます。
これが下手ならオペさんから無線から怒号飛びます。
適切な吊り治具を選ぶ際のポイントとは?

吊り具には、荷物に合わせたワイヤーロープやスリングベルトを使います。
鉄骨を吊り上げる場合、ワイヤーロープを使用すると鉄の角で切れてしまったり、クセ(キンク)になってしまうことがあるため、吊り上げるものによって吊り具も臨機応変に変える必要があります。
下手な玉掛けは荷物の落下をさせる原因になります。
例えば、ピアノを吊り出すなら毛布とスリンベルトで吊り出したりするようにします。
ワイヤーロープでは、ピアノを破損してしまう可能性があるので吊り具では避けるようにしているのです。
ワイヤーのなかでも種類があり、ワイヤーの太さを「〇分(〇ぶ)」という単位で表して種類を分けています。
3分ワイヤーや4分ワイヤーは一般的な建設資材吊り込みに使います。
何t材料の重さがあるかによっては、使い分ける目方(重さを目で見て判断)して使い分けます。
鉄筋比重の意義と玉掛け作業における重要な役割
この「使い分ける見方」は、吊るものによって割り出しますが、ここでは建設業でよく使われる「鉄筋」を用いて「つり上げ荷重」をどのように算出するか、下の表を用いて解説していきます。
呼び名 | 公称直径 ( d)mm | 公称周長 ( I)cm | 公称断面積 ( S)cm 2 | 重量(単位質量)kg/m |
D4 | 4.23 | 1.3 | 0.1405 | 0.110 |
D5 | 5.29 | 1.7 | 0.2198 | 0.173 |
D6 | 6.35 | 2.0 | 0.3167 | 0.249 |
D8 | 7.94 | 2.5 | 0.4951 | 0.389 |
D10 | 9.53 | 3.0 | 0.7133 | 0.560 |
D13 | 12.7 | 4.0 | 1.267 | 0.995 |
D16 | 15.9 | 5.0 | 1.986 | 1.56 |
D19 | 19.1 | 6.0 | 2.865 | 2.25 |
D22 | 22.2 | 7.0 | 3.871 | 3.04 |
D25 | 25.4 | 8.0 | 5.067 | 3.98 |
D29 | 28.6 | 9.0 | 6.424 | 5.04 |
D32 | 31.8 | 10.0 | 7.942 | 6.23 |
D35 | 34.9 | 11.0 | 9.566 | 7.51 |
D38 | 38.1 | 12.0 | 11.40 | 8.95 |
D41 | 41.3 | 13.0 | 13.40 | 10.5 |
D51 | 50.8 | 16.0 | 20.27 | 15.9 |
例えば鉄筋の表を参考にすると、
D13の異形鉄筋は単位質量が、0.995kg/mです。
長さが5.5mのところを見てみると、長さの質量は4.98kg/mと書かれています。
つまり、100本の束の場合、498kg=約500キロになります。
500キロという質量が分かったので、この重さを踏まえてワイヤーロープを選定していきます。
このように、質量を算出し、吊り荷の形状の合わせて吊り具を選定していくのです。
材料ごとにワイヤーロープを算出できるツール
本当に目方だけでは失敗するので、綿密に質量を割り出す必要があります。
ですが、いちいち表をみて計算していくのはとても効率が悪くなると感じるのではないかと思います。
そこで、コンドーテックさんのホームページにあるような計算ツールを用いると効率よく作業ができるのでおすすめです。
是非、玉掛け作業で吊り具を選定する場合に活用してみてください。
玉掛による吊り具の適切な取り付け方法
講習は、あくまでワイヤーの知識や吊り方の知識がメインで編み方は教えてくれませんので、現場で吊り具の角度を経験していく必要があります。
ちなみに、筆者はワイヤーの編み方は鳶に教えてもらいました。

一般的に吊り具の角度は60°程度に収めるというのが推奨されています。
吊り具の本数は、吊り荷の形状によって違うので状況に合わせて対応していくようにしましょう。
ワイヤーロープの張力(吊り荷を引っ張ることができる力)から算出して選定する方法については以下の記事にまとめていますので、合わせて参考にしてみてください。
この記事では、鉄筋の比重から質量を求める方法と重さからわかる玉掛ワイヤーの選び方、さらにクレーンの定格荷重について解説していきます。恐らく鉄筋工事の現場でクレーン操作をするときに悩むことといえば、鉄筋の比重を考えた玉掛け作[…]
玉掛け作業(吊荷の落下)での労働災害事例
玉掛け作業は、度々労働災害が起こることもある危険な作業です。
吊り荷は大なり小なり様々なものがありますが、特に大きものを吊り上げるときはより正確な玉掛作業を行うよう心掛けなければなりません。
材料は番線で結束したりしてバラけないようにする対応も必要ですね
徳島労働基準監督署は、無資格者に対して吊り上げ荷重1トン以上の移動式クレーンの玉掛け作業を行わせたとして、阿波バラス㈱(徳島県吉野川市)と同社工場長を労働安全衛生法第61条(就業制限)違反の容疑で徳島地検に書類送検した。令和2年3月、同社労働者が負傷する労働災害が発生している。
労災は、同社工場で発生した。工場長を含む3人で、ワイヤロープで玉掛けした鉄板の束を移動式クレーンでトラックから地面に降ろす作業をしていた際、鉄板の束が傾いてワイヤロープが切れ、労働者に落下している。
【令和2年7月9日送検】
労働新聞社引用
滋賀・大津労働基準監督署は、無資格にもかかわらず玉掛け作業を行った梅立工務店(=うめりゅうこうむてん、滋賀県野洲市)と同社代表取締役を労働安全衛生法第61条(就業制限)違反の容疑で大津地検に書類送検した。平成28年4月、同社労働者が頭部を強打し、脳挫傷などを負う労働災害が発生している。
同代表取締役は、野洲市内の新築工事現場で棟上げを行う際、無資格にもかかわらず玉掛け作業を行った。玉掛けに使用した繊維ベルトが切れ、持ち上げていた梁が落下し、仮設足場に直撃。足場が崩落し、足場で作業していた同社労働者が墜落して負傷した。「資格が必要な作業だと知っていたが、資格を取得していなかった」と供述している。
【平成28年7月25日送検】
労働新聞社引用
2つのケースでは、玉掛けの資格を保有していない(無資格)の作業者が作業に当たったことで書類送検された事例です。
どの資格を取得する際にもいえることですが、資格を取得する際は安全教育も同時に行われます。
そのため、資格を保有している人=その作業についての安全対策を十分に知っている人、ということがいえます。
つまり、資格を保有している人が作業に当たるのは、作業中の安全を保障するためのものでもあるので必ず有資格者が作業に当たるようにしましょう。
ではそんな玉掛ですが、実際に取得するにはどのような講習を受講しないといけないのか?その取得方法を次のページにまとめていきたいと思います。是非チェックしてみてください
玉掛け技能講習取得方法と講習内容について

では、玉掛け技能講習の内容を解説していきます。
制限荷重1t以上の揚貨装置及びつり上げ荷重1t以上のクレーン、移動式クレーンもしくはデリックの玉掛け業務に従事する方は、労働安全衛生法に基く技能講習を修了しなければならないことが義務づけられています。
ちなみに、荷重1トン未満の場合は特別教育を受講する必要がありますが、実際の現場ではあまり役に立たないので、技能講習を受講しておくことをおすすめします。
受講時間は、現在保有している資格及び業務経験によって変わります。
玉掛け技能講習を15時間で取得
下記のいずれかの資格取得で講習時間を短縮して取得できます。
- 移動式クレーン、クレーン・デリック(旧クレーン運転士免許、旧デリック運転士免許含む)、揚貨装置いずれかの運転士免許所有者
- 小型移動式クレーン
- 床上操作式クレーンいずれかの運転技能講習修了者
また、15時間では、こちらの取得方法でも短縮して取得可能です。
- 玉掛け特別教育修了後、つり上げ荷重が1t未満のクレーン等の玉掛け経験が6ヶ月以上ある方。(特別教育修了証、事業主経験証明必要)
玉掛け技能講習を16時間で取得する場合
- つり上げ荷重が1t以上のクレーン等の玉掛けの補助作業経験が6ヶ月以上ある方。(事業主経験証明必要)
玉掛け技能講習を18時間で取得
- クレーン等の特別教育修了後、クレーン等の業務経験が6ヶ月以上ある方。(特別教育修了証のコピー貼付、事業主経験証明必要、定期点検表添付)
- 鉱山にてつり上げ荷重が5t以上のクレーン、移動式クレーンの業務経験が1ヶ月以上ある方。(事業主経験証明必要)
以上の条件のうち、どちらかを満たしている方が対象となります。
玉掛け技能講習を19時間で取得する場合
上記のいずれにも該当しない人が対象になります。
つまり、他の資格がなくても取得することができます。
玉掛特別教育と技能講習の違いとは?
1つ目は、1t未満の重量を持つ物を取り扱う玉掛け作業資格です。それに対して、もうひとつは1t以上の重さも全て対象となる玉掛け作業に関わる資格です。
1t未満の資格を取得するためには、「玉掛け業務に関する特別教育」が必要となり、全ての玉掛け業務に従事するためには「玉掛け技能講習」が必要となります。
玉掛特別教育の講習時間は?
玉掛けの業務は、クレーンや移動式クレーンを使用して荷物を吊り上げる作業であり、ワイヤーロープなどの吊るための装置の準備から、フックに装置を取り付ける作業、フックから取り外すまでの一連の手順を指します。
この業務は、玉掛け作業者とクレーン運転者が連携して行う作業であり、玉掛け作業を行うには、クレーンの種類、特性、構造、機能、安全装置などについての理解が必要です。
」規則では、1トン未満のつり上げ荷重の玉掛け業務に携わる労働者には特別教育が義務付けられており(クレーン等安全規則第222条)、1トン以上の荷重を持つクレーンの場合は、技能講習修了者以外は業務に就くことができません。
玉掛けの技能講習は、建設事業主向けの助成金制度の対象であり、この講習を受けることで、玉掛け業務に関する知識やスキルを習得することができます。これにより、玉掛け作業の安全性と効率性を向上させることができ、職場での事故やトラブルを未然に防ぐことができます。
技能講習を取得するメリット
自分の成長過程で作業資格や技能講習を受けた後は、「取得した資格に見合った仕事を行う」「日常業務で活かす」「他者への指導・支援」など意識的な行動が求められます。しっかりと目標を設定し、効果的にスキルアップへつなげていくことが肝要ですね
自身のスキルアップは単なるキャリア形成だけでなく、個人や企業全体の競争力向上に欠かせない要素です。作業資格や技能講習を通じて身につけたスキルは、将来へつながる投資でもあります。私も様々な作業主任者や重機関連の資格を取りましたがこれは今、役に立ってますね
今後取得するならこういう資格を目指すのもいいですね。
業種別職人から施工管理へ現場で役立つ資格をまとめ
私も施工管理になる前は現場職人でした。土木系なのでやはり土木施工管理技士を取得しましたね。良ければチェックしてみてください
土木系 | 土木施工管理技士 | ||
建築系 | 建築施工管理技士 | 建築士 | |
電気系・設備系 | 管工事施工管理技士 | 電気施工管理技士 | 電気通信施工管理技士 |
給水装置工事主任技術者 | 2級ボイラー技士 | 消防設備士四類 |
この記事にまとめている技能講習一覧
技能講習一覧をまとめたこの記事についてご紹介いたします。技能講習は、労働現場において特定の作業を行う際に必要なスキルや知識を習得するための重要な取り組みであり、安全性と生産性の向上に貢献します。この一覧には、様々な職種における技能講習が含まれており、それぞれの分野で必要とされるスキルや手法を網羅しています。
まず、建設業界における高所作業や重機操作などの技能講習が挙げられます。これらの講習は、安全意識を高め労働災害を防止することを目的としています。また、製造業ではフォークリフト操作や化学物質取り扱いなど、特定の作業に必要な技術や扱い方を身につけるための講習があります。
技能講習 早見表 | |
木材加工用機械 | フォークリフト |
プレス機械 | 不整地運搬車 |
乾燥設備 | 高所作業車 |
コンクリート破碎器 | ショベルローダー |
地山の掘削 | 小型移動式クレーン |
地山の掘削および土止め | 床上操作式クレーン |
土止め支保工 | 車両系(解体用) |
ずい道(掘削) | 車両系(基礎工事) |
ずい道(覆工) | 車両系(整地) |
採石 | 玉掛け |
はい作業 | ボイラー取扱 |
船内荷役 | ボイラー据付け |
型枠支保工 | 鋼橋架設 |
コンクリート解体 | コンクリート橋架設 |
足場組立て | 鉄骨組立て |
鉛 | 木造建築物組立て |
特定化学物質 | 酸素欠乏・硫化水素 |
四アルキル鉛 | 酸素欠乏 |
特定化学物質および四アルキル鉛 | 普通圧力 |
有機溶剤 | 化学圧力 |
ガス溶接 | 石綿 |
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まとめ
今回は、玉掛け作業の資格取得方法と、その仕事内容について解説していきました。
まとめますと、
- 玉掛けとは、クレーン作業時に荷物にワイヤーなどのロープで吊り上げるための固定などをする作業
- 玉掛け作業は、落下事故などが多く簡単な作業に見えても危険の伴う作業である
- 玉掛け作業を行う場合、ワイヤーの選定・吊り荷の荷重を算出して行う
- ワイヤーの掛け方は、荷物の形状によって異なる
- 玉掛け作業の資格は、様々な仕事の幅を広げてくれるのに役立つ資格
ですね。
玉掛けとは、荷物を吊るときにワイヤーやスリングベルトで巻きつけて、クレーンのフックに掛けて合図をして巻き上げる仕事になります。
簡単そうですが、ワイヤーの選定や荷物の重さを知らないと出来ない難しい内容です。
ただ経験が無くても取得出来る資格講習なのでぜひ受けてみることをおすすめします。