この記事では、「地山の掘削及び支保工作業主任者」とは、どういった資格なのか、その作業内容と資格を取得する方法について解説していきたいと思います。
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習とはどういう資格なんだろう?と、このように資格の名前からでは一体どういった作業をすることができる資格なのかよく分からないですよね。
そこで、今回はどのような作業の際にこの資格が活かせるか、作業主任者の役割などを解説していきたいと思います。
また、一体どういう資格でどのように取得するのかも合わせて解説していきたいと思います。
このブログは他にもこのようなことがまとめてあります。合わせて気になる記事を確認してみてください。全体を確認するにはこちら
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者とは?
工事現場では地下に構造物を作ることが多々あります。
土の状態はいろいろな種類があります。例えば、粘土質の土や砂混じりの土や礫(石混り)がたくさん混じっている土など場所ごとに違います。川の近くや海の近くでは水が吹き出してくることもあります。
工事現場ではニュース等で生き埋めになったとかのニュースがたまに報道されますが、生き埋めになるという状況は土が崩れてが要因になります。
このような、要因を引き起こさないための工事を管理する資格を取得し、選任されている人を「地山の掘削及び土止め支保工作業主任者」と呼びます。
作業主任者を選任する条件は以下の通りです。
地面を掘るときに2メートル以上地下に掘削する時や2メートル以上の高低差が発生するときには作業主任者を事業主は選任しなければなりません。
土止めと土留の違いは?
まず安全衛生法・規則からみて見ると法規には【土止め】とありますね
第二編 安全基準
安衛法・安衛則から引用
第六章 掘削作業等における危険の防止
第一節 明り掘削の作業
第二款 土止め支保工
(材料)
第三百六十八条 事業者は、土止め支保工の材料については、著しい損傷、変形又は腐食があるものを使用してはならない。
技術的図書などを見てみるとと【土留】となってますね
なるほど、厚生労働省と国交省で違うということなのか・・・という解釈ですね
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者の「地山の掘削」とは?
まず、掘削していくと、土の種類によって掘削面は大きく変わります。
すると、掘削する面によって土の種類は変わっていきます。
しかし、掘削する中で掘っていくと土はおのずと土が崩れてしまいます。
砂の場合には当然ながらすぐに崩れますよね。
このように崩れないように仮に止める工事を土留(土止め)といいます。
ちなみに「地山」とは、地盤面から掘削して掘った地面を指します。
このような作業を行う場合、掘削による地山の崩壊や土留めの崩壊の知識がないと、施工中に起こる可能性も多々あります。
その中で正しい知識と正しい施工方法等を知る事は非常に重要です。
この地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習は以前は別々の資格でしたが、関係性が大きいので、掘削労働安全衛生法その他関係法令の改正によって平成18年度より資格が1つになりました。
ちなみに、私は両方別々に受講しました。
例えば、マンションの基礎や住宅の地下室等でも2メートル以上で車両系建設機械(バックホウ)で掘削を行う事は頻繁にあります。
そのため、地山の掘削作業は車両系建設機械を扱えなければ作業をすることができません。
その車両系建設機械については、以下の記事にまとめているので是非合わせて読んでみてください。
この記事では、車輌系建設機械の種類や技能講習を取得する方法について解説していきたいと思います。また、ユンボやパワーショベルなどの車両の用途などについても合わせて解説していきたいと思います。一度は乗ってみたい車だけど、どんな[…]
地山掘削の労働災害・災害事例は・・
福島・会津労働基準監督署は、地山の崩壊による危険防止措置を怠ったとして、建設業で元請けの仙建工業㈱(宮城県仙台市)および同社現場所長と、建設業で1次下請けの㈱アラモト(宮城県仙台市)および同社統括部長を労働安全衛生法第30条(特定元方事業者等の講ずべき措置)、同法第14条(作業主任者)違反などの疑いで福島地検会津若松支部に書類送検した。派遣元会社からアラモトへ派遣されていた60代の派遣労働者が死亡する労働災害が発生している。
労災は令和2年3月10日、福島県大沼郡で仙建・秋山ユアビス特定建設工事共同企業体が施工する只見線災害復旧工事で発生した。労働者が高さ約5メートルの地山の掘削作業に従事していたところ、地山の崩壊に巻き込まれた。
元請の現場所長は、共同企業体と関係請負人の作業が同一の場所で行う際、労働災害を防止するための作業間連絡や調整を行っていなかった疑い。1次下請の統括部長は地山の掘削作業主任者を選任していなかった疑いがある。
【令和2年8月20日送検】
労働新聞社引用
このように作業主任者を選任していなかったことで、安全管理ができず痛ましい事故が起きてしまいました。
このニュースから、作業主任者を選任することの重要性が分かったのではないかと思います。最近もこんなニュースがありましたね。
「土止め支保」の腹起し・切梁とは?
では、地山の掘削及び土止め支保工作業主任者の「土止め支保」とはどういったことをするのでしょうか。
大きな現場では車両系建設機械の基礎杭ではなく、仮杭で杭を立て込み、土とセメント等で固める連壁工法等あります。
ただ掘れば掘るほど地面から土圧が掛かりますが、その土圧に負けないように仮に補強する事が必要になります。
この支える工事をを土留め支保工といいます。
土留めは周りの土が崩れないように仕切りの板や杭を打って杭の間に板を入れて止める方法や鉄板を打ち込んで崩れないようにする方法もあります。
支保工には切り張り腹起こし火打など呼ばれる補強材があります。
この鉄製の補強材を適正に取り付けられる知識をこの講習で学んでいくのです。
労働安全衛生法第14条、施行令第6条の第9条により講習を修了した人はこの業務の指揮命令を行うことができます。
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者の仕事と役割
国土交通省が出している「安全衛生規則」には、掘削作業を行う際の安全対策が書かれています。
その規則を要約し、具体的な安全対策をとるとするなら、
- 形状、地質及び地層の状態、亀裂、含水、湧水及び凍結の有無や状態、埋設物等の有無や状態、高温ガス及び蒸気の有無や状態といった地質調査を綿密に行う
- 綿密な地質調査から具体的な施工計画や作業計画を作成する
- 掘削する地山と掘削面の勾配から安全な掘削方法をとる
- 自然災害の発生後及び発破後は必ず点検をする
- 掘削が2m以上の深さを掘る場合は、作業主任者を選任する
- 作業主任者が、作業の方法を決定し作業を直接指揮するようにする
- 作業主任者が器具及び工具を点検し、不良品を取り除くこと
- 安全帯やフルハーネス及び保護帽及びヘルメットの使用状況を監視すること
- 建築物の近くで掘削をしない
- 作業計画には、機械の作業範囲・運行経路を定め、運転者と作業者に周知する
- 地下水や雨水はポンプでくみ上げて排除する
といった安全対策を講じるとともに、作業に関わる方たちにも周知していくようにしましょう。過去問まとめ:2級土木施工管理技士:10年分ダウンロード/学科・実地試験(経験記述対策)とおすすめの通信教育講座でも問題として出てきますので知識として・・・
以下の表は、掘削する場合に守るべき掘削面の高さと掘削面の勾配を地山の種類ごとにまとめています。
是非参考にしてみてください。
地山の種類 | 掘削面の高さ/掘削面の勾配 |
---|---|
岩盤や堅い粘土からなる地山 | 5m未満 90° 5m以上 75° |
その他の地山 | 2m未満 90° 2m以上5m未満 75° 5m以上 60° |
砂からなる地山 | 5m未満 35°以下 |
発破等で崩壊しやすい地山 | 2m未満 45°以下 |
地山の掘削及び土留支保工作業主任者講習とその作業内容
作業主任者の業務は、職長と安全衛生責任者とは違うその業務に対して工事前の着手の打ち合わせ確認が業務に求められます。
つまり、作業の開始する指示を現場で指揮命令を直接することが業務として求められるのです。
先述したように作業主任者は使用する工具や機械の点検、機材の破損がないかの確認等も作業主任者の大切な役割です。
さらに、その作業に対して使用する、保護具等の着用使用等を確認し作業者に使用を指示するのも大きな役割となっています。
以下の記事では、職長になる際に知っておくべき内容を解説しているので、作業主任者を目指す方は是非チェックしてみてください。
この記事では、職長安全安全衛生責任者と職長の違いについて解説していきたいと思います。また、現場での統括安全の重要性なども合わせて解説していきたいと思います。と、実際どんな資格内容なのかよく分からないですよね。そこで[…]
作業主任者にはどのような仕事と実務経験が必要?
この資格の受験資格は以下のようになってます。
- 地山の掘削及び土止め支保工の切り張り又は腹起しの取付け又は取外しに関する作業に3年以上従事した経験を有する者。
- 学校教育法による大学、高等専門学校、高等学校又は中等教育学校において土木、建築又は農業土木に関する学科を専攻した者で、その後2年以上地山の掘削又は土止め支保工の切り張り又は腹起しの取付け又は取外しに関する作業に従事した経験を有する者。
- その他厚生労働大臣が定める者
法の改正以前に地山掘削だけ取得した人もしくは、土留め支保工だけ取得した人は講習時間は短縮されます。
ただ、詳しい内容は指定講習機関に問い合わせするようにしましょう。
地山掘削・土止め作業主任者のカリキュラムと講習時間
作業主任者講習は三日間で行われます。
そのカリキュラムの内容は以下のようになります。
- 作業の方法に関する知識(地山の掘削方法・浮石・埋設物の処理、湧水の処理及び排水の方法、法面防護の方法、土砂及び岩石の性質、土留め支保工の種類、材料・構造・組立図、土留め支保工の切りばり・腹おこし等の取り付け及び取り外しの作業に関する知識)
- 工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識(工事用設備及び機械の取り扱い、電気及び内燃料機関器具及び工具、危険防止の措置)
- 作業に対する教育等に関する知識、関係法令(労働安全衛生法、労働安全衛生規則、クレーン等安全規則等)
講習は三日間で行われる中で上記の内容を勉強した中で最後に修了試験があります。
まとめ
今回は、地山掘削土留支保工作業主任者について解説していきました。
まとめますと、
- 地山の掘削作業が2m以上であれば、作業主任者を選任する
- 作業主任者は、掘削作業をするときは掘削面の高さと掘削する勾配をしっかり把握しなければならない
- 崩壊を防ぐために土留志保工の作業も行わなければならない
- 講習には受講資格があるので注意する
- 作業主任者資格を取得すると、建設キャリアアップシステムでの評価が上がる
ですね。
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習はトンネル工事や地下の躯体構築を行う人が受講する資格ですが、造成工事や水道管工事等でも必要になってきます。
重機土工行う会社では必須の資格になります。車両系建設機械の取得だけではなく地山や土留に関しても知識をつけてスキルアップできる資格になります。