この記事では、移動式クレーンを操作する場合の資格や講習の内容を解説していきたいと思います。
また、クレーンそれぞれの定格荷重についても合わせて解説していきたいと思います。
皆さんは、クレーンを操作する場合もちろん資格がいることはご存じだと思いますが、実はクレーンの種類や規格によって操作できるクレーンが違うのです。
えっクレーンの資格って一つあれば、操作できるものじゃないの?と、このように意外とクレーンの資格の種類って知らないという方が多いのではないかと思います。
そこで、日常的に聞くことも多いクレーンという機械には、様々な種類があり免許、技能講習、特別教育と資格の種類もそれぞれ違いがあるということを踏まえて解説していきたいと思います。
また、今回はクレーンの資格の一つ、移動式クレーンの特別教育、技能講習取得方法や受講時間カリキュラムについて解説していきたいと思います。
移動式クレーン資格の基礎知識について
クレーンはラフターやデリック、ユニック等の様々な機械の種類があります。
クレーンの特別教育と技能講習については、下の5種類がクレーンオペレーターになる講習になります。
まずは、自分に合ったものから取得するのを目指してみてはいかがかと思います。
- 移動式クレーンの運転の業務に係る特別教育
- 小型移動式クレーン運転技能講習
- 移動式クレーン運転士
- 床上操作式クレーン運転技能講習
- クレーン・デリック運転士免許
つまり、資格は1つではなくて複数の種類に分かれて資格があります。
今回はその中から、移動式クレーンの運転の業務にかかわる特別教育と小型移動式クレーン運転技能講習について解説していきます。
前提:クレーンでの労働災害/労災事故は多い
だからイロイロと事故も多いのでこのような事故も発生してます
東京・八王子労働基準監督署は、無資格者に吊り上げ荷重1トン以上の移動式クレーンを操作させたとして、土木業のエクセレント工業㈱(千葉県船橋市)とクレーンを操作していた同社の労働者を労働安全衛生法第61条(就業制限)違反の疑いで東京地検立川支部に書類送検した。倒れたクレーンとフェンスの挟まれた同労働者が、全治4カ月の重傷を負う災害が発生している。
災害は令和2年10月6日、東京都日野市にあるJR豊田駅構内の土木工事現場で発生した。同労働者が小型移動式クレーンを運転して資材の積卸し作業を行っていたところ、クレーンが転倒して資材置場のフェンスとの間に挟まれた。同労働者は移動式クレーンの資格を持っていなかった。
令和3年2月25日送検
労働新聞社引用
このように、大型でなくても、移動式クレーンによる事故は多くあります。
こうした事故を未然に防ぐためにも特別教育を受講して安全に作業にあたる必要があります。
移動式クレーン運転の専門的な知識を身につける特別教育とは?
特別教育を受講して操作できるクレーンはつり上げ荷重が1トン未満のものと定められています。
ここで一番重要なのが、吊り上げる荷物の大きさではなく重さ(つり上げ荷重)が1トン未満の場合に限り移動式クレーンを操作できるということに注意しておきましょう。
ちなみに、バイクの回収や農業等でたまに見る軽トラックに付いているクレーンを運転する場合には、移動式クレーンの運転の業務に係る特別教育を受講しないとなりません。
この特別教育には受講資格は関係なく誰でも取得できます。
クレーン特別教育の受講科目と講義時間について
学科9時間で実技4時間の合計13時間での受講となります。
クレーン特別教育の学科内容
- 動式クレーンに関する知識3時間
- 原動機及び電気に関する知識3時間
- 運転のために必要な力学に関する知識2時間
- 関係法令1時間
クレーン特別教育の実技内容
- 移動式クレーンの運転3時間
- 移動式クレーンの運転のための合図1時間
以上の講習をすべて受講すると1トン未満のつり上げ荷重であればクレーンを操作することができます。
ただ正直、この特別教育では1トン未満しか吊り上げできないため技能講習を受けることをお勧めします。
この特別教育を受講するのであれば、玉掛け講習を受講しておくとより仕事の幅が広がるのではないかと思うので、玉掛け講習を受講しておくことをおすすめします。
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資格取得を解説する小型移動式クレーン運転技能講習
仕事の幅が大きく広がるのは、運送業や配送業でも活躍できる小型移動式クレーン運転技能講習を取得することが一番いいと思います。
「ユニック車」という車を聞いたことがあると思います。
知っていますか?ユニック車の本当の名前とは?
トラックにクレーンがついた日常でよく見かけるトラック型のクレーンです。
ユニックという名前は、古河ユニックという会社の製品を指すことで、通常の移動式クレーンは積載型トラッククレーンとかで呼ばれることがあります。
ゼネコンの現場では4.9トンのクローラクレーンやカニクレーンと言われるクレーン等を見かけることがあります。
技能講習で重要な内容は、吊り上げの重さが5トン未満(吊り上げ荷重)のクレーンの操作が可能になります。
レンタルや販売等で技能講習で乗れるクレーンとして4.9トンまでの商品が多いのは、技能講習で吊り上げ荷重が定められているからなんですね。
受験資格は大きく決まりがありませんが資格や経験があれば一部の受講時間が短くなることがあります。
小型移動式クレーン技能講習の資格受講方法とは?
保有資格や経験年数で取得は変わってきますが、経験がなくても20時間の三日間での講習で誰でも資格を取得することができます。
自分の保有資格で講習時間を短縮できる
- 13時間の時間で取得するには
- 鉱山にて、吊り上げ荷重5t以上の移動式クレーンの業務経験が1ヵ月以上
- 鉱山にて、吊り上げ荷重5t以上の移動式クレーンの業務経験が1ヵ月以上
- 16時間の時間で取得するには
- クレーン・デリック、揚貨装置いずれかの運転士免許所有者 ・玉掛け技能講習修了者 ・床上操作式クレーン運転技能講習修了者
- クレーン・デリック、揚貨装置いずれかの運転士免許所有者 ・玉掛け技能講習修了者 ・床上操作式クレーン運転技能講習修了者
- 17時間の時間で取得するには
- 車両系建設機械(基礎工事用)運転技能講習修了者 ・建設機械施工技士1級・2級の第2種または第6種合格者
- 車両系建設機械(基礎工事用)運転技能講習修了者 ・建設機械施工技士1級・2級の第2種または第6種合格者
- 19時間の時間で取得するには
- 小型移動式クレーン、クレーン等の特別教育修了後、業務経験が6ヵ月以上
- 小型移動式クレーン、クレーン等の特別教育修了後、業務経験が6ヵ月以上
- 20時間(3日間)の受講で資格を得ることができます。
小型移動式クレーン技能講習に関してです。
あくまで免許ではなく、講習なのでさらに上を目指すのであれば移動式クレーン免許を取得するのがいいと思います。
移動式クレーン免許は後日また記載させて貰います。
クレーン車の安全性を支えるアウトリガー
クレーンの中で重要なのは、いくらの重さまで吊れるのか、というポイントです。
当然ながら重たい荷物を吊り上げるとクレーンブームが折れたり、滑車のワイヤーが切れたりします。
当然ながら高速で巻き上げたらワイヤーが絡まって乱巻になって絡まってしまうこともあります。
特に移動式クレーンは重い荷物に負けないようにアウトリガーと言う踏ん張る足を張り出して荷物を吊ります。
昔は転倒しないようにユニックの荷台にユンボを乗せて重しにしたりして、無理矢理やってましたね。
あと、コンクリートから車体を縛り付けて、ワイヤーで固定したりとかして車体が無理やり転倒しないようにして、ブームはガチャガチャと折れそうな音をたててました。
今、そんなことをしたら即現場から退場ですね。
アウトリガー 張り出しせずに転倒 労働災害事例
さいたま労働基準監督署は、車体を安定させるための装置であるアウトリガーを張り出さずに移動式クレーンで作業を行ったとして、松栄建設㈱(埼玉県三郷市)と同社の工事責任者を労働安全衛生法第20条1号、27条1項、クレーン等安全規則第70条の5(アウトリガー等の張出)違反の疑いでさいたま地検に書類送検した。
平成27年7月9日、埼玉県新座市大和田3丁目、国道254号線の大和田交差点付近の下水道工事現場で、つり上げ荷重35トンの移動式クレーンが転倒し、交差点に侵入してきた大型バスに激突する事故が発生。バスは回送中で乗客はいなかったが、作業員3人とバスの運転手1人が重軽傷を負った。
事故はクレーンが土留め用の鉄板(重量約790キログラム)をつり上げ、移動する際に起きた。転倒防止のためのアウトリガーを張り出さずに作業をした結果、荷重に耐えられず、荷に引きずられる形で転倒した。
【平成29年12月8日送検】
労働新聞社引用
当然、アウトリガーを張り出ししなければ、荷重によっては倒れてしまう事故が発生します。
目視で大丈夫だろうと判断したら、後々大事故なる可能性が高いので必ずアウトリガーを張り出すようにしましょう。
また、アウトリガーだけでなくクレーンごとの定格総荷重を次の章で解説しているので、吊り下げ作業をするときは参考にしてみてください。
安全第一:クレーン作業における定格総荷重の重要性
移動式クレーンの中で大きな現場ではクローラークレーンの4.9トンと2.9トンの自走型のクレーンがあります。
これも技能講習を取得すれば運転可能になります。
クレーンで重要なのは定格総荷重表といわれる表があります。
作業半径はクレーンのブームがどこまで届くか記載されています。
このクローラークレーンであれば16メーター近くまでブームを伸ばすことができます。
ブームは筒状で伸ばすごとに 1段ごとにジブが切り替わります。
ジブをを出し切った中で作業半径は約16メートルでその際吊れる重さは440と書いてあります。
440キロまで吊るができますが、定格総荷重とはクレーンのフックの重さと吊り具のワイヤー等の重さと荷物の大きさで判断となります。
この定格総荷重などは材料によって違います。
そこで、下の記事では建設現場でよく使う材料ではどのようになるのか解説したものをまとめてみたので、是非読んでみてください。
この記事では、鉄筋の比重から質量を求める方法と重さからわかる玉掛ワイヤーの選び方、さらにクレーンの定格荷重について解説していきます。恐らく鉄筋工事の現場でクレーン操作をするときに悩むことといえば、鉄筋の比重を考えた玉掛け作[…]
まとめ
今回は、移動式クレーンの特別教育と小型クレーンの技能講習について解説していきました。
まとめますと、
- 移動式クレーンの特別教育を受講すると1トン未満の吊り下げ荷重であれば操作することができる
- 小型クレーンの技能講習を受講すると5トン未満の吊り下げ荷重であれば操作することができる
- クレーン自体の操作だけでなく、玉掛けといった作業も非常に重要な資格であるので複数兼ねて取得しておくべき
ですね。
さらに、高みを目指したい人は移動式クレーン免許の方を取得しクレーンのオペレーターとして活躍することができる資格になります。
材料の運搬や自分の作業の補助的な資格としては技能講習を取得するとスキルアップできると思います。
ぜひ取得してみてはどうでしょうか?