この記事では、有機溶剤の取り扱いについて、その危険性と特別教育と技能講習について解説していきたいと思います。
有機溶剤って危険物になるのかな?特定化学物質と何が違うのかな?と、このように有機溶剤とはどのような資格や講習を受けて、資格を取得するのか知らない人もいると思います。
ちなみに、これから解説していく有機溶剤作業主任者と特別教育は塗装工事やの防水工事では必須の資格になります。
防水工や塗装工は是非この資格を取得することをおすすめします。
では、そんな有機溶剤とはどういうものなのか解説していきたいと思います。
有機溶剤の基本知識とは?労働安全衛生法に基づくリスク管理

有機溶剤とは身近なところでいうと、ガソリンやシンナー等が身近でわかりやすいと思います。
つまり、有機溶剤とは他の物質を溶かす性質を持つ物質を指します。
労働安全衛生法では、施行令第6条と有機溶剤中毒予防規則にて様々な溶剤に対して規制があります。
有機溶剤は有機溶剤中毒予防規則の対象となる有機溶剤は下記の54種類です
指定される位の有害性があるもので例えば皮膚についた場合や液体を吸い込んだ場合など取り扱いを誤ると肌や呼吸器など急性中毒や将来的な慢性中毒などの健康障害があるため適切な取り扱いを知らないとならないのはこの資格の大きなところです。
※溶剤は常に最新の情報を確認してください。規制対象が増えたり、厳しい制限対象になったりすることがあります。
有機溶剤中毒を予防しましょう.indd (mhlw.go.jp):抜粋記事
有機溶剤と混同しやすいのが特定化学物質(特化物)についてです。
有機溶剤に指定されている物質は有機溶剤中毒予防規則に定められている物質に対し、特化物は特定化学物質障害予防規則に定められている物質を指します。
有機溶剤中毒を予防しましょう.indd (mhlw.go.jp) こちらは有機溶剤に関して細かく記載されています
特化物や有機溶剤の違いなど、詳しくは下の記事にまとめていますので是非合わせて読んでみてください。
この記事では、特定化学物質を扱う際の資格と資格講習の内容について解説していきます。また、間違えやすい「特定化学物質」と「有機溶剤」の違いについてもあわせて解説していきます。特定化学物質を扱うときは、特化物講習と言わ[…]
有機溶剤取扱業務特別教育の必要性と講習内容
特別教育は法律によって、事業主は労働者に有機溶剤の作業をさせるときにはこの特別教育をすることが決められています。(労働安全衛生法第60条の2第2項)にて決まっております。
有機溶剤の作業を行う人は、その中毒や予防の対策を必要とすることを理解して作業につかないといけません。
特別教育を受講しないと、最悪の場合シンナー中毒や塗料による皮膚の炎症と化学物質による労災もあります。
有機溶剤取扱業務特別教育の重要性と受講要件

受講資格は特になく、有機溶剤の作業に従事する人が受講する形になります。カリキュラムとしては以下の事項を受講が必要になります。
- 有機溶剤による疾病及び健康管理を1時間
有機溶剤の種類及びその性状とその取り扱いに対する業務や健康障害その他予防方法等や応急措置を学びます。 - 作業環境管理を2時間受講
有機溶剤蒸気の発散防止対策の種類及びその概要から始まり有機溶剤蒸気の発散防止対策を学びます。
さらに、設備及び換気のための設備の保守、点検の方法、作業環境の状態の把握や有機溶剤に係る事項の掲示、有機溶剤の区分の表示の理解し、有機溶剤の貯蔵及び空容器の処理の方法を学びます。 - 保護具の使用方法1時間
勇気溶剤取り扱う際の、保護具の種類、性能、使用方法及び保守管理の内容になります。 - 関係法令1時間
労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令、労働安全衛生規則及び有機溶剤中毒予防規則(これに基づく告示を含む。)中の関係条項を学びます
塗装工事等では塗料の施工にあたり、特別教育を実施してない会社は多いのが現状です。 リフォームや防水工事等でも同様で塗料の危険性を知らない中で作業し有機中毒になる方もいます。
電動工具のように、目に見えるような怪我ではなく、蓄積し、後から影響が出るのがこの有機溶剤の怖いところです。
有機溶剤特別教育は安くてすぐに取得可能
SATの有機溶剤特別教育では、受講者の学習がしっかりと動画で行われたことを確認するため、事業者は監視員を配置する必要がありません(労働局の認可を受けています)。
また、自宅や通勤中など勤務先以外でも、24時間いつでもWEB受講が可能です。
資格取得への第一歩:有機溶剤作業主任者技能講習とは?

有機溶剤作業主任技能講習は、労働安全衛生法で決められた国家資格になります。
特別教育でも説明させてもらいましたが、クリーニング工事や防水工事、塗装工事等でも多くの有機溶剤を使用するため、作業を行う中で特別教育実施だけではなく適切に行う為、作業を指示管理する作業主任者が必要になります。
ガソリンのように揮発性の高いものや引火して火災になるようなものもあるため、高速道路等の橋脚の改修等ではたまに火災になるケースもありニュースで取り上げられることもあります。
私もシンナーを車に乗せていて密閉された空間の中で軽いシンナー中毒で歯が痛くなったことがあります。
労働安全衛生法の中ではこの有機溶剤を使用する現場では、この作業に対して指揮監督をするものを事業主は選任する必要があるということです。
作業主任者を選任し、監督させることは、有機溶剤から作業員の健康リスクを守るためにあります。
特定化学物質・四アルキル鉛等作業主任者技能講習の資格や危険物取り扱い等の資格と一緒にとるとさらに仕事の幅が広がり給与アップになります。
有機溶剤作業主任者技能講習資格取得の手順と義務

有機溶剤の作業主任者の業務としては、作業員に対して溶剤の安全な取り扱いの指導と、密閉された空間の中で作業を行う場合には健康被害がないように事前に確認が必要です。
有機溶剤作業主任者の主な仕事は、
適切な換気方法や換気設備の設置点検などを行い、作業者の安全確保を行うことが義務となっております。
有機溶剤を用いて作業を進める場合、事業所
屋内作業場又はタンク、船倉若しくは坑の内部その他の厚生労働省令で定める場所において、
有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務で、厚生労働省令で定めるものに係る作業については、
有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者のうちから有機溶剤作業主任者を選任し、作業の指揮その他定められた事項を行わせなければなりません。
作業主任者不在で起こった有機溶剤の労働災害

長野・松本労働基準監督署は、有機溶剤を使用する際に適切な措置を講じなかったとして、タンク内部にゴムの内張りするゴムライニング加工などを行う㈱マスヤマ(埼玉県上尾市)と同社取締役を労働安全衛生法第22条(事業者の講ずべき措置等)違反などの疑いで、長野地検松本支部に書類送検した。同社取締役は、本社において、安全衛生管理に関する業務を統括管理していた。
平成28年8月、長野県松本市の同社工場において、労働者2人が有機溶剤を用いて、直径約1メートル、高さ約2.5メートルのタンク内で作業していたところ、中毒になり、1人が死亡し、もう1人は休業8カ月と診断される重体に至る労働災害が発生した。
有機溶剤には、第二種有機溶剤に指定されているトルエンが99%以上含まれていた。このため、法律上、有機溶剤作業主任者を選定することに加え、局所排気装置またはプッシュプル型換気装置を設ける必要があった。しかし、同社は怠っていた。さらに、作業者の見やすい場所に対して、有機溶剤が人体に及ぼす影響や中毒時の対応などを示すことも義務付けられているにもかかわらず、掲示していなかった。
【平成30年3月5日送検】
労働新聞社引用
このように、有機溶剤を使用する場合に作業主任者を選任・配置することに加え、十分な安全管理をしなければ、このような重大な事故を引き起こす恐れがあります。
作業員の命を守るだけでなく、事業所が営業停止にならないよう、しっかり安全対策を講じていくようにしましょう。
有機溶剤作業主任者技能講習:講習時間と内容
有機溶剤作業主任者技能講習は、作業主任者が有機溶剤を安全かつ適切に扱うために必要な訓練や知識を提供する重要な講習です。この講習では、作業主任者が有機溶剤の取り扱いに関する法令や規定を遵守し、職場でのリスクや事故を最小限に抑えるための技能を身に付けることが求められます。
有機溶剤作業主任者技能講習は、通常は2日間にわたって行われます。この期間内に科目において、法令遵守や安全管理などの学科的な内容を学びます。こ
れらの科目は、有機溶剤作業において生じる危険性やその防止方法、適切な装備の使用方法などに焦点を当てています。
この資格は18歳以上であれば取得可能で特別教育と違い合計13時間で学ぶような形になります。
日数としては2日で特別教育より更に、カリキュラムをさらに踏み込んで勉強します。
- 溶剤による健康被害、その予防措置に関する知識4時間
- 作業環境の改善に関する知識4時間時間
- 保護具に関する知識2時間
- 関連法令2時間
- 修了試験1時間
有機溶剤を使っているのは建設業だけではなく、印刷や製造等で行う塗料とかクリーニング所で使うクリーニング溶剤、燃料やピット等で作業する清掃用の溶剤等様々な取り扱う業種があります。
そのためこの資格を取ると、作業主任者として活躍できる一方で、転職等でも生きてくる資格になります。
まとめ
今回は、有機溶剤を用いた健康リスクとその安全性を守る特別教育・作業主任者になるための技能講習について解説していきました。
まとめますと、
- 有機溶剤とは、有機溶剤中毒予防規則に定められている物質であり、他の物質を溶かす性質があるもの
- 有機溶剤を取り扱うときは特別教育を受講しておく義務がある
- 有機溶剤を取り扱う現場では、作業主任者を選任し、配置しておく義務がある
- 有機溶剤作業主任者は計2日間の講習を経て、事業所から選任されることで作業主任者として働くことができる
- 有機溶剤の作業主任者資格を取るなら、合わせて特化物の資格も取得しておくと仕事の幅が広がる
ですね。
一般的な塗装工事を行う中で防水工や塗装工はこの資格の重要性を理解してない人もいます。
化学リスクアセスメントを考えた中では、例えば塗装だけでなく普段使っているセメントや左官材でも同様に化学物質は入っており体に影響が出る場合があります。
アスベストが一時期問題になりましたが、それと同様に考え、体に蓄積する悪影響を考えた中で作業を行っていかなければならないと思います。