建設業を襲うインボイス制度により一人親方が全滅~その制度について徹底解説!~

わかりやくインボイス制度説明

以下の解説は、消費税率が10%時点で建設事業の場合のインボイス制度導入前です。

  • 元請の狸建設:課税事業者
  • 一次請の狐建設:課税事業者
  • 一人親方屋号:ウサギ企画:免税事業者

の設定です。

元請:
タヌキ
建設

今回は一次下請けさんに440万円の仕事を発注しますよ!

(税別400万円:税込440万円=消費税40万円)が狐建設さんは支払い代金で税金を預かってる状態ですね。

一次
キツネ
建設

発注業者の狸建設から400万円の仕事を引き受けたので、
工事の一部を220万円で一人親方さんに発注します。

(税別200万円:税込220万円=消費税20万円)にて、一人親方のウサギ企画仕事を発注しました。


(収支:税込440万円ー220万円=220万円)になりますよね

ただし、消費税:預り消費税40万円ー支払消費税20万円=納税消費税20万円 これが仕入控除額になりますね。

つまり、売上:収支220万円ー仕入控除額20万円=200万円

「仕入控除額」とは、商品を販売するときに請求する(預り消費税)から商品の仕入れ時にかかる消費税(支払消費税)を差し引きすることができる控除額を指します。

事業者はこの預り消費税から支払消費税を差し引いた差額を支払って、消費税を納税しています。

一人親方
ウサギ企画

では、220万円で仕事を引き受けました!

一人親方のウサギ企画は年収1000万以下だったので、免税扱いになりました。

(ウサギ企画は免税事業者なので売上は220万円)

新人保険屋
千尋

マジ、ウサギ企画儲けてますやん。

ネコマル

そうなんですよ。これ免税の強みですね。

では、これがインボイス制度導入後だとどうでしょう?

元請
タヌキ
建設

一次下請けさんに440万円の仕事を発注します

(税別400万円:税込440万円=消費税40万円)が狐建設さんは支払い代金で税金を預かってる状態ですね。ここは変わらないですね。

一次下請
キツネ
建設

発注業者から400万円の仕事を引き受けたので
220万円で一人親方さんに発注します。

一人親方
ウサギ企画

かしこまりました。すぐに対応します。

一次下請
キツネ
建設

あれ、決算で控除されないんです。

なんで、こうなったのか?

ウサギ企画は1000万以下の免税事業主で、発注した金額は先ほどと同じです。

税別200万円:税込220万円=消費税20万円)
(収支:税込440万円ー220万円=220万円

ただし、ここからが変わります。
消費税:預り消費税40万円ー支払消費税0万円納税消費税40万円仕入控除額)
つまり、売上:収支220万円ー仕入控除額40万円=180万円

つまり、キツネ建設は仕入控除の適応外に発注して消費税控除されなかった。

その為、一次下請けさんは控除を受けることができず、支払う消費税が増えてしまい、20万もの売上が減ってしまいました。

こうして売上が減ってしまうとどうなるのか?

すると、

一次下請
キツネ
建設

一人親方さん(免税事業者)に依頼すると
支払う消費税が増えて売上が減るから依頼しないでおこう

となるわけです。

すると、下請けさんのお仕事で生活ができていた一人親方さんに全く仕事の依頼が来なくなる可能性があります。

これが、インボイス制度導入の恐ろしさです。

新人保険屋
千尋

じゃ、免税業者から課税業者になれば良いじゃん。

ネコマル

それが落とし穴です。

「じゃあ一人親方さんも免税事業者から課税事業者になればいいいのでは?」と思うかもしれませんが、建設業で掛かる消費税は売上の10%となります。

新人保険屋
千尋

えっ?一人親方つぶし?

ネコマル

そうなんですよ

つまり、先ほどの一人親方さんの依頼金額から算出すると、

税込220万円ー消費税10%(20万円)=200万円

となります。

諸費用など含めて考えるとなると結構な出費に繋がるので、免税事業者が課税事業者になるのは相当な痛手となるでしょう。

インボイス制度導入の目的

新人保険屋
千尋

なんで、こんな面倒くさいことをやるんですか?

ネコマル

理由は国が儲けたいから

では、こうした不利な立場になり得る人がいるにも関わらず、どうしてインボイス制度は導入されることになったのでしょうか。

インボイス制度を導入する根本的な理由は「消費税をもっと回収したい・税率を上げて国に入るようにしたい」という理由がありますが、もう少し詳しく解説しますと、大きな目的としては2つあります。

  • 取引上の消費税額を正確に把握したい
  • 免税事業者の益税を廃止したい

どういうことか一つひとつ解説していきます。

インボイス制度導入の目的①取引上の消費税額を正確に把握したい

消費税が5%から8%・10%へと増税された際、税率が複数あることにより消費税処理がとても複雑化し、処理が追い付かないという問題が起きました。

特に取引上の消費税は、その仕入・発注にかかる内容によって軽減税率か否かで処理がより複雑化することから、国は一つひとつの取引で掛かった消費税額を把握しておきたいと考えました。

そこで、「適格請求書」を用いて取引上で掛かった消費税を把握することで適切な納税を管理することができるようになるのです。

インボイス制度導入の目的②免税事業者の益税を廃止したい

取引上、消費税を含めて仕入・発注を行うのですが、免税事業者はこの時にかかった消費税が免税されるのです。

本来消費税として納税されなければならない税金が利益として収益になっている、つまり「益税」となっている税金を廃止して納税してほしいということです。

簡単に言えば、国は「免税事業者は益税があるんだからそれを納税してくださいね(消費税が免税されて余分に儲かってるんだから払えるよね?)」と主張したいのです。

ですが、免税事業者であるが故、消費税分を考えずに請求金額で考えている一人親方さんも少なくないわけで、今の売上から10%差し引かれると考えると今後の取引が難しくなってくるのです。

新人保険屋
千尋

一人親方の免税扱い考えるとヤバいですね。

ネコマル

だから今後は法人化するしかないですね。

新人保険屋
千尋

なんで?課税対象になるでしょ

ネコマル

法人化して2期までは消費税免除する方法もあります。

では、どうすればとりあえずいいのか?その方法をまとめてみました。